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 三途の川を進むおヨネ
もう少しで向こう岸につきそうな時
後ろから声が聞こえた
「おヨネさ〜〜ん」
「帰ってきて〜〜!」
「そってちに行くのはまだ早いわよ〜〜」
振り返ると、楽園ホームのみんなが叫んでいた
鹿児島ケンも管理人のおばさんも、さくらちゃんも双子のもみじとかえでも叫んでいた
ハニーパイリーダーの香川も叫んでいた、石川も山形も叫んでいた
クレイジーナイトのポールも、シロも神奈川マリも叫んでいた
小さな声で「おヨネさん」と言う声が聞こえた
振り向くと、亡くなった管理人のご主人が「おヨネさんは、まだ向こうにやることがたくさんあるんだから、こっちに来ないで帰りなさい」と優しく微笑んでいた

「分かったじゃ!あたしは帰ります〜〜〜!」

廃屋で戦うシロとマリVSクロ 
一匹と一人のハイパー攻撃が決まった
「トオリャアアアアア〜〜〜!」
吹っ飛ぶクロ
「ぶぶげぼげぶづ〜〜〜!」

勝敗は決した

おヨネ目覚めた!
元気よく起き上がった
しかし、お婆さんのままだ
とりあえずステージに走った!

ステージでは鹿児島ケンのバンドの演奏が続いていた
しかし、長宗我部が水筒に入れた睡眠薬が効いてきた
朦朧として欠伸をし始め、フラフラになってきたケン
ステージ袖におヨネが駆けこんできた
ケン爺さんと目が合った
ケン爺さんヨロヨロと袖までやってきた
「おヨネさん、タッチじゃ」
差し出した右手にタッチするとケン爺さん倒れて大鼾で寝た

「まかしときなさ〜〜〜い」

おヨネステージに飛び出した、17歳の衣装を付けた77歳のおヨネ婆さん
客席で見ていた楽園ホームの爺さん婆さんたちが立ち上がって歓声
唖然と見ながら演奏するケンバンドのメンバー
おヨネは歌詞なんか知らないから、スキャットで誤魔化しながら適当に「イエ〜〜!」とか「愛してるぜ〜〜」とか入れて歌った
77歳のおヨネと、平均年齢80歳以上のケンバンドの演奏はどんな若者の演奏よりも熱かった

演奏の間に、客席で息絶えていた高知金五郎爺さんが運び出されていた

優勝はクレイジーナイトだった
ポールの父親は人目も憚らずに泣いていた、その横で恥ずかしそうにしながらも、ポールはおヨネを探していた
ハニーパイのリーダー香川がポールに近づいて
「ポール、やっぱりお前たちはすごいや、素晴らしい演奏だったぜ」
「ありがとう、香川・・・ところで、ヨネちゃんはどこに行ったんだい?」
「分からないんだ・・・ヨネちゃんと同じ格好してる、あの婆さんに聞いても知らないって言うし・・・」
二人が見た先に、17歳の衣装を身に付けて爺さん婆さんに囲まれたおヨネが居た

「おヨネさんすごかったよ!」
「さすが、おヨネ婆さん!」
「優勝できなかったけど、カッコよかったよ」
爺さん婆さんたち興奮していた

そこに、シロを抱きかかえた神奈川マリが帰ってきた
おヨネを見かけて手招きした
駆けよるおヨネ
「マリちゃん、ありがとう」
「ヨネちゃん・・・シロに話しは聞いたわ・・・びっくりしちゃった、17歳の女の子に変身していた・・・」
あわててマリの口をふさぐおヨネ
「マリちゃん、そこから先は言わないで、お願いじゃから」
「ごめんなさい、内緒よね」
二人は顔を見合わせて笑った

その日から長宗我部社長が姿を現すことは無かった
高知金五郎と長宗我部が同一人物だってことを知る人は誰も居なかった
そして、17歳のヨネちゃんも居なくなった

楽園ホームに平和が戻った
週末には楽園ホームの庭でおヨネとケンバンドでライブをやって、その収益金を運営費にまわしたおかげで、ホームの運営は楽になった
時にはハニーパイも演奏に来てくれた、マリちゃんも一緒に・・・


♪この世は天国 なんかじゃない〜
この世は地獄 しんどいよ〜
早くポックリ 逝きたいよ〜
楽にポックリ 逝きたいよ〜

極楽 極楽 あの世は極楽
極楽ロックでイエ〜〜〜〜ッ!


おしまい





 廃屋の中での戦いに決着がつきそうになっていた
息も絶え絶えのシロ、シロが死ねば、おヨネも死ぬ

何だかよく分からないまま、ケン爺さんはおヨネを楽屋に連れて行った
「婆さん!婆さん!おヨネ婆さん!一体どうしたことなんじゃ!?」
何とか意識を取り戻したおヨネ婆さん
「・・・今はそんなこと・・・説明してる時間は無いですじゃ・・・ケンさん・・・コンクールに優勝しておくれ・・・」
そう言うとまた気を失った

ステージでは演奏続行不可能ということでハニーパイは失格になった
香川は泣いていた「ヨネさ〜〜〜ん、どこ行ったんだよ〜〜」
石川と山形が泣きじゃくる香川を引きづって退場した

元気を取り戻した長宗我部がトイレから戻ってきて、ステージで泣きじゃくる香川を見てニヤッと笑った

楽屋でケン爺さんが叫んだ!
「ワシに任せておけ!おヨネ婆さんの弔い合戦じゃあ〜〜〜!」
叫んで、水筒の水を一気に飲んだ

廃屋ではクロの前足に首を絞められシロが意識を失っていた
「俺の勝ちだ〜〜〜〜!」
クロがそう叫んだ時、尻尾を思いっ切り引っ張られた
「ぶぎぶぎげぼぼ〜〜〜!」
マリはそのままクロを振り回し壁目掛けて投げつけた
また、壁にめり込むクロ
マリはシロを抱き起した
「大丈夫!?しっかりして?」
しかし、息をしていない
マリは意を決して人工呼吸
やがてシロが息を吹き返した
「あ・・・ありがとうございます・・・」
「わたし、ヨネちゃんに頼まれて来たのよ、あなたたちなんで戦っているの?」
「ヨネちゃん?・・・そうですか・・・あなたはおヨネさんの友達なんですね、良かった・・・あたしはあのネコを倒さなければいけないんです・・・あたしが死ねば、おヨネさんも死んでしまいますにゃ・・・」
「えっ?そんなマジな話なの?」
「はい・・・マジですにゃ」
壁にめり込んだクロが雄たけび上げながら壁の穴から首を抜いた
「もう許さん!お前たち一人と一匹!まとめてやっつけてやる!」

楽屋で生死の境を彷徨っているおヨネ
三途の川を渡ろうとしていた
・・・ここが三途の川ってやつなのね、まあ、思ったより綺麗ね、向こう岸も花がたくさん咲いていて、なんか楽しそう、あたしもたくさん生きてきたからね・・・そろそろ、のんびりしたいし、寿命ってやつだね・・・
おヨネ婆さんすっかり黄泉の国へ行くつもりになっていた


つづく



 廃屋目指して走るマリ
廃屋では馬乗りになったクロがシロの首を絞めていた
「フフフ・・・終わりだな・・・」
シロの顔が蒼くなっている
そこに駆けこんでくるマリ、二匹の姿を見つけ、思いっ切りクロの後頭部を蹴りあげた
「ぶひゃげぼぼどぷぅ」
クロは空中を吹っ飛んで壁に頭がめり込んだ

シロ危機一髪助かった
「これでいいのかしら?」
マリは半信半疑

公民館のトイレから元気なおヨネが飛び出してきた
「おまたせ〜〜〜〜!」
泣きながら喜ぶ香川
「ヨネちゃ〜〜〜〜〜〜ん」
おヨネは香川を無視してステージへ急ぐ
「なんでみんな無視するの〜〜」
泣きながら追いかける香川

ステージではちょうど歓声を受けながらクレイジーナイトが退場するところだった
すれ違うポールとおヨネ
おヨネの横でポール立ち止まり、小さな声で
「クレイジーナイトが優勝したら・・・デートしてくれよな」
そう呟いて去っていった

おヨネたちのハニーパイがステージに立った
拍手と歓声
楽園ホームのお爺さんお婆さんも来ている

演奏が始まった

♪この世は天国 なんかじゃない〜
この世は地獄 しんどいよ〜
早くポックリ 逝きたいよ〜
楽にポックリ 逝きたいよ〜

極楽 極楽 あの世は極楽
極楽ロックでイエ〜〜〜〜ッ!

大歓声
それを聞きながらおヨネは思った
・・・あたしたちが優勝してやるんじゃ!・・・

しかし
廃屋での戦いは終わったわけではなかった

壁にめり込んだクロが
「グオオオオオオ〜ッ」と叫び、床に飛び降りた
「俺は怒ったぞ!もう許しちゃおけねえ」
目は血走り、口からはよだれがダラダラ溢れた

「ネコがしゃべってる?」
マリはびっくり
「危ないですから、下がってください」
シロが言った
「わお!最近のネコはみんなしゃべるの?」
そう言いながらも廃屋から飛び出し電柱の陰からおそるおそるのぞいた

「決着を付けてやる!」
「それはあたしのセリフよ!」
飛びかかるクロ、シロもジャンプしてクロの攻撃を交わしながら反撃
再び戦いが始まった
しかしクロのほうが強い
次第にシロは不利になってゆく
シロの味方をしたくても、二匹の動きがあまりにも早いので、マリにはどうなっているのか分からなかった

間奏に入った
突然おヨネの意識が朦朧となってきて、ガックリと膝をついた
・・・まただわ・・・もうダメみたい・・・このままじゃ変身が解けてしまう・・・
おヨネはふら付きながらステージから降りてトイレに向かった
演奏していた香川たちは何が起こったか分からないまま何度も間奏を演奏しつづけた
客席もザワザワしてきた
香川泣きながら「ヨネちゃんどこ行ったんだよ〜〜〜!」と叫んだ

トイレまでヨロヨロ来ると、丁度男子トイレから鹿児島ケンが出てきた
「緊張すると、ションベンが近いわい・・・」
ケンの姿を目にして、安心したのか「ケンさん・・・」と呼びかけて倒れた
「うん?」
驚くケン、その目の前でおヨネの魔法が解けてお婆さんに戻って行った
「こ・・・これは・・・どうしたことじゃ?」


つづく





ロックバンドコンクールの参加出場者名簿を見て、長宗我部は愕然とした
鹿児島ケンが昔の仲間を集めて参加していたのだ
・・・あいつは昔ジャズバンドをやっていたと聞いたことがある・・・
おヨネが優勝することはありえないが・・・あいつだったらもしかして・・・

長宗我部はケンたちの楽屋に忍び込み、ケンのいつも持っている水筒に睡眠薬を入れた

・・・これで、大丈夫だろう・・・

廃屋で 戦うシロとクロ
公民館にたどり着くおヨネ
玄関で香川たちが待っていた

「ヨネちゃん待ってたよ、もうすぐ俺たちの出番だから、すぐに準備して!」
「分かった、ごめんよ、とりあえずご不浄に行かせておくれ」
荒い息でトイレに駆けこむおヨネ
突然、心臓が止まるような衝撃に襲われる
ガクッと膝をつくおヨネ

廃屋ではクロが優勢だった
シロの尻尾を噛んで引きづり回していた
苦しそうなシロ

おヨネも苦しんでいた
しかし、どうしてこんなに苦しいのか、おヨネには分からなかった
突然変身が解けてお婆さんに戻った
「こ・・・これは・・・?」
するとすぐにまた17歳の少女に戻った
しかし苦しいのは変わらない
便器に座ってゼエゼエ荒い息のおヨネ

客席では長宗我部社長がニヤニヤしながらコンクールを見ていた
そんな、長宗我部の身体にも異変が現れた
ダラダラと汗が流れ、手足が震えた
「どうしたんだこれは?」

シロとクロの戦いは一進一退
シロが危機に陥ると、おヨネの魔法に影響が表れ、クロが危機に陥ると、長宗我部の魔法に影響が表れた

長宗我部は立ち上がった
ふら付きながらトイレの個室に駆けこんで、崩れ落ちた、頭がガンガン痛い、おヨネと同じように老人に戻ったり若返ったりした
壁一枚向こうでは、同じようにおヨネが苦しんでいるのを長宗我部は知らなかった

おヨネのこもっている個室の前に、神奈川マリが来ていた
「ヨネちゃん大丈夫?便秘?早くしないと出演時間になっちゃうわよ!」
苦しむおヨネの頭の中に、マリとは違う誰かが呼びかける声が聞こえた
「だ・・・だれ?」
それはシロの声に似ていた

助けて・・・おヨネさん・・・助けて・・・

クロとの戦いで苦戦しているシロの心の叫びだ!

おヨネはすっかりお婆さんの姿に戻っていた
苦しみながら個室前のマリに叫んだ
「廃屋に行って!白いネコを助けてあげて!早く!」
「何言ってるの、ヨネちゃん、ネコなんか助けてる場合じゃないんだけど・・・早く出て・・・」
「いいから!お願い!理由は後で言うわ、早く廃屋に行って白いネコを助けて!」
その必死な言い方に、真剣なものを感じたマリは、それ以上聞くのをやめて、とりあえずトイレを飛び出した
トイレの前では香川たちが待っていた
「ヨネちゃんは?」
マリは香川の質問は無視して公民館から駆けだし、廃屋目指して走った


つづく



 ロックバンドコンクール三日前に、おヨネは意識を失って倒れた
楽園ホームで倒れたのが幸いだった、管理人のおばさんがすぐに救急車を呼んでくれた
翌日には意識が戻ったが、しばらく安静にするようにと医者に言われた
変身して少女になっていても、毎日ホームから町まで自転車で通うのは、けっこう負担だったらしい
病院のベッドで目覚めると横にシロが丸まっていた
徹夜で看病してくれたらしい

「シロ・・・」
その声で目を覚ますシロ
「おヨネさん、大丈夫ですかにゃ?」
「・・・今何時?練習に行かなくちゃ・・・」
起き上がろうとしたが、身体が思うように動かない
「無理ですよ、おヨネさん、今はゆっくり寝ていにゃいと・・・」
「コンクールに出て優勝しなくちゃ・・・」
「コンクールは明後日ですにゃ、それまでゆっくり休んでいれば・・・出られるかもしれませんにゃ」
「・・・そうだね・・・分かった・・・」
そう言いながら、また眠りに落ちるおヨネさん

そして、ロックバンドコンクール当日がやってきた
まだ安静にしていなくちゃいけないのに、おヨネは病院を抜け出して公民館に向かった
自転車の前かごにシロを乗せて公民館に走った
「おヨネさん、ホントに大丈夫にゃ?コンクールなんかより、おヨネさんの身体が心配にゃ」
「大丈夫じゃ!あたしは77年も生きているんじゃ!空襲の中を逃げ回ったこともあるんじゃ!戦争なんかに比べれば楽なもんじゃ!あはははは〜〜〜〜」
元気よく笑ってはいるけど、顔色は悪かった

いつものように廃屋に自転車を置いて
魔法の呪文で変身した

ゴクラクゴクラクナムアミダブツ〜〜〜

17歳のおヨネちゃんに変身した
「おヨネさん、その姿でコンクールの出るの?」
「分からん!なりゆきまかせじゃ!」
一瞬殺気を感じてジャンプするシロ
今までシロがいた地面の土がはじけ飛ぶ
着地したシロ
廃屋の中は暗い、その暗闇の中からクロの声が聞こえた
「俺たちの決着を付けようぜ」
「これから大事なコンクールなの、それが終わったらいくらでも相手になるわ」
「俺はそんなに待っていられないんだ、何たってせっかちな性格なんでな」
突然飛びかかってきた
問答無用と言うことらしい
「おヨネさん!一緒に公民館に行けにゃいわ!コンクール頑張って!」
「分かったわ!ありがとうシロ!」
おヨネは公民館目指して駆けて行った
西の空にあかね雲

廃屋で戦うシロとクロ
負けると言うことは死を意味する
そうすると、その魔法は効力を失ってしまうのだ


つづく




 土佐カンパニーのベランダで身体を横たえていたのは黒猫のクロ
毎日美味しい物ばかり食べているので、最近少々太り気味
しかし、野良猫として生活していた時に比べると、ここは天国である
血で血を洗うような70年間の生活は忘れようとしても忘れられない・・・
今でも夢に見て、汗ビッショリで目覚めることもある
あんな生活はもうごめんだ
しかし、戦いの決着がついた今、のんびり過ごせる余生は素晴らしい

大きく欠伸した時、殺気を感じた
あわてて部屋の中に戻ろうとしたが、思いのほか身体が重かった
空気を切り裂く音がして、左頬に痛みを感じた時には部屋の床に叩きつけられていた

「誰だにゃ?」

痛みにこらえながらあたりを伺う、日が沈みかけている部屋に明かりは付いていないので、頼りになるのは隣のビルの明かりだけ

「太りすぎじゃにゃいの」

目をこらして見ると、ベランダの柵に白猫のシロがいた

「シロ!生きていたにょか!?」
「ええ、生きているわ、おヨネさんというお婆さんに助けられたのにゃ」
「そうか!良かった!お前が生きていて嬉しいにゃ」
「心にも無いこと言わにゃいで!お婆さんに助けられていなければ、あたしは死んでいたわ・・・あたしの身体に何度も爪を立てたのは、あなたよ」
「そ・・・そりゃ、仕方にゃいさ・・・やらなければ俺が死んでいたからにゃ・・・しかし、殺すつもりは無かったにゃ・・・良かった、これからも仲良くやろうぜ」
優しく微笑むクロ、この笑顔に何度騙されたことだろう
何度浮気しても、いつもこの笑顔で騙された、しかしもう二度と騙されない

「あんた、魔法使ったでしょ?」
「ああ・・・気づいていたのかにゃ・・・それがどうしたにゃ?」
「まあ、そのことをどうこう言うわけじゃにゃいの、しかしあんたが魔法を使ったおかげで、あたしの命の恩人おヨネ婆さん・・・いや、楽園ホームのみんなが困っているの」
「そうか、でもそれは俺のせいじゃないにゃ」
「分かってるわよ、あんたが魔法をかけた相手のせいで困っているにょよ」

「何を言いたいんだ?」
「その男にかけた魔法を解いて欲しいの、それがあたしのお願いにゃ」
「ふ〜ん・・・それは困ったにゃ・・・その男のおかげで俺はこうしてのんびり暮らしていけるんだからにゃ・・・」
「あたしのお願いを聞いてくれたら、楽園ホームで暮らせるようにしてあげるわよ」
「ふん!あんないつ潰れるか分からないような老人ホームで暮らしたくはにゃいにゃ!どうせ食べ残しのご飯に味噌汁かけたような食事しか食わせてくれにゃいだろう?」
「美味しいわよ、ネコご飯」

睨みあうシロとクロ
「あたしのお願い聞いてくれにゃいのなら、仕方にゃいわ・・・」
構えるシロ
クロも尻尾を伸ばして戦闘態勢
「フ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
「グルルルルルルルル〜〜〜〜〜〜ッ」
うなり合う二匹

飛びかかろうとした時
ドアの開けるカギの音がした
固まる二匹
ドアが開き、入って来たのは高知金五郎爺さん
楽しそうに鼻歌を歌いながら部屋の明かりを付けた
「おや、クロ、何やってるんじゃ?」
ドアが開く寸前、シロはベランダから飛び降りて逃げていた

「さて、今日も魔法をかけてくれ」
「また、いつものスナックに行くのかにゃ?」
「当たり前じゃ、それが今のワシの一番の楽しみじゃからな、クロのおかげで金貸しも成功したから、金がガッポガッポあるんじゃ、使わないともったいないじゃろ」
「そりゃそうだにゃ」
クロは高知金五郎に魔法をかけた、85歳の爺さんが光に包まれ、あっと言うまに30歳の青年に変身した
「おおお〜〜〜!若さが身体にみなぎってくる!それじゃ行ってくるぞ!」
「変身時間は3時間だからにゃ」
「分かっとるわい!」
若返った高知金五郎、いや、今は長宗我部社長、彼は意気揚々とスナックに出かけて行った
見送るクロ
窓の外を眺めて
顔をゆがめた

・・・あいつ、生きていたとはにゃ、しくじったにゃ・・・


つづく


 町長、助役、警察署長、教育委員会委員長、高校校長などなど、町のお偉いさんの昼食会

ポールのパパ、警察署長が何気なく切りだした
「確かに、ロックなんてうるさい音楽は非行への一歩かもしれませんなぁ、しかし、中には真面目に活動している若者もいるかもしれませんよ、ロックなんてやめろと言ったら、ホントに非行に走ってしまうかもしれませんぞ、そんなこと可哀そうでしょう?」
みんな無言で黙々と昼食
「公民館で一日だけロックバンドコンクールやったって・・・ねえ?…大目に見てもいいですよねぇ?」
みんな無言
肉を飲み込んだ町長、ジロッと署長を睨んで
「・・・一人くらい非行に走ったって、いいんじゃないの」
「は・・・はあ・・・」
町長下品な音を立ててお茶を飲んだ
署長の反抗もここまでか・・・
「いや・・・あの・・・町長、ちょっと聞いてください・・・」
町長大きな音でゲップをした
何も言えなくなってしまう署長
「今日の肉は固かったなあ・・・」
町長の意見にうなずく助役と委員長ほか一同

ドアをたたく音
返事を待たずにドアが開いた
そこに立っていたのは、おヨネ婆さんと青森組組長ウンコ垂れの太郎
一瞬ドキッとなる一同、おヨネ婆さんに関しては何も感じないが、青森組組長にはみんな多少なりとも弱みを握られている
まず町長が口火を切った
「組長、今日はなんだね?ちゃんとアポを取ってもらわんと・・・」
組長、一同を見回す、思わず顔を伏せる一同
「私は今日はこの方の付き添いです」
「付き添い?」
おヨネ婆さんが一歩前に出る
誰だこの婆さん?という表情で一同見る

「あたしは名もなき婆さんです、今日はひとつ提案を持ってきましたのじゃ」
そう言いながら、懐から一枚の紙を取り出し広げた
「みなさん、これを見てくだしゃれ」
その紙には、こう書かれてあった

チャリティーロックバンドコンクール
賞金 一千万円
町立公民館にて

「町長さん、チャリティーですじゃ、人助けのためにロックバンドコンクールをやりたいんじゃ、これだったら、公民館使わせてもらえるじゃろう?」
町長顔を真っ赤にしながら立ちあがり
「チャリティーだろうとミルクティーだろうと、ロックなんかのために公民館は使わせない!その日は演歌ショーをやるんじゃ!」
青森組組長がおヨネの前に出て、町長を睨みつけた
「うっ・・・」
ヘビに睨まれたカエルのようにドサッと椅子に崩れ落ちる町長
「わ・・・分かった・・・」
おヨネ、目をキラキラさせて
「分かったって、どういうことですか?ロックバンドコンクールのために公民館を使って構わないってことですか?」
「あ・・・ああ・・・使って構わない・・・」
「分かりました、それでは失礼いたします」
おヨネと組長満面の笑顔で帰っていった

ドッと疲れてゲップも出ない町長
署長は心の中で喝采を叫んでいた
・・・権蔵には俺が町長を説得したって言っておこう、ウヒャヒャ・・・

役場から出てきたおヨネと組長、立ち止まって
「太郎ありがとう」
「おヨネちゃんの役に立てて嬉しいよ」
「フン!ホントはウンコ垂れなんかの力を借りたくなかったんだけどね、まあ今回は仕方ないか・・・しかし、太郎は町長のどんな弱みを握っているんじゃ?あんたに睨まれただけでションベンもらしとったぞ」
「ハハハ、もらしはしないだろうけどさ、あいつが町長になれたのも、俺のおかげだからな」
「フフッそうかい・・・どうだ、あんみつ奢ってやろうか?」
「ホントかい!?やった〜〜!おヨネちゃんに奢ってもらうのは初めてかな」
「行くぞ!」
「はい!」
金魚のフンみたいにおヨネの後を付いていく組長
ふたりのおかげで、無事ロックバンドコンクールは開催されることになった 


つづく


 ロックバンドコンクールまで、あと二週間
鹿児島ケンは昔ジャズバンドでベースを弾いていた
その当時の仲間に連絡を取り、ロックバンドを結成して練習していた

ハニーパイも毎日貸しスタジオで練習
同じくクレイジーナイトも、ハニーパイに負けてなるかと猛練習

ハニーパイの練習が終わり、帰ろうとした時、出口のところでクレイジーナイトがギターケース抱えてたむろしていた、邪魔で通れない
おヨネがよく通る声で怒鳴った
「ポール!邪魔だよ」
おヨネに気付いたポール大分はあわててギターケースをどかし、仲間に言った
「お前ら、道を開けろ!ヨネ姉さんが通るぞ!」
クレイジーナイトのメンバーはキョトン
「ヨネ姉さん?」
ポールはおヨネに最敬礼
「今日も練習ご苦労様です」
ハニーパイのリーダー香川も茫然としながら出口を通るおヨネに続いた
あの日以来、ポールはおヨネのことを(ヨネ姉さん)と呼んで尊敬しているのだ

みんなが一生懸命、バンドコンクール目指して練習している時

・・・ロックバンドコンクールが中止になるらしい・・・という噂が流れた

頑固者で演歌好きな町長が、町の公民館をロックバンドコンクールに使うなんてけしからん!と使用禁止命令を出したらしい、主催者は何とか町長に頼んだのだが、頑として受け付けないらしい

ポール大分は父親に聞いてみた
彼の父は警察署長なのだ

仕事から帰ってきた父は居間で寛いでいた
「パパ・・・お願いがあるんだけど・・・いいかな?」
「お願いだと!またか!」
舌打ちする父
「今度は何をやったんだ?先生を殴ったのか?無免許運転で犬を轢いたのか?シンナーか?痴漢か?ゆすりか?たかりか?銀行強盗か?」
「パパ・・・パパは僕を何だと思ってるんだよ?・・・今はそんなことしてないよ、毎日ロックバンドコンクールに出場するために練習してるんだ」
「ロックバンドコンクール?」
「そうだよ、公民館で二週間後にやることになっていたんだ、ところがコンクールが中止になるってウワサが流れているんだけど。パパ知ってる?」
「ああ、そのことか・・・町長が反対してな、ロックバンドのために公民館なんか使わせないって怒ってるんだ、代わりに演歌ショーをやるらしい」
「僕はコンクールで優勝するために毎日練習してるんだよ、今更中止なんて、そんなのダメだよ」
「権蔵!おまえはそんなことやってる場合じゃないだろ!勉強しろ勉強!」
「僕はロックが好きなんだ!」
「クラシック音楽にしなさい!」
「お願いだよ!これからはパパの言うことを何でも聞くから、今までみたいに迷惑かけないから、僕たちこのコンクールを目指してずっと練習してきたんだ!ヨネ姉さんだって、香川だって、みんなコンクールのために頑張っているんだ!お願いします、パパ、コンクールが終わったら真面目に勉強して大学に入って卒業したら警察官になるから!」
頭を下げるポール大分権蔵
じっと見ているパパ
「ホントに勉強するのか?大学に行くのか?警察官になるのか?」
「ホントだよ!絶対絶対、パパとの約束守るよ!」
パパの目に涙が浮かんできた
「分かった・・・明日町長に話してみる・・・」
「ありがとうパパ!」
パパに抱きつくポール、何年ぶりかで子供に抱きつかれたパパは感動のあまり号泣
「権蔵〜〜〜!おまえは生まれた時からホントに可愛らしい子だったよ!パパは嬉しいよ!おまえのためなら何でもしてあげるよ〜〜〜〜!」

ポール、パパの腕の中でニヤッと笑った


つづく



 おヨネが自室でネコのシロとゴロゴロしていた
「おヨネさん、バンドのほうはうまくいってますかにゃ?」
「まあまあだね、みんな一生懸命やってくれてるから楽しいよ、シロのおかげだよ、ありがとう」
「そりゃ、良かったにゃ、ところで、いまは変身して練習してるでしょ?」
「ああ、そうだよ」
「本番の時はどうするにゃ?」
「そうなんじゃよねぇ・・・それをちょっと悩んどるんじゃよ・・・いまの姿で出場して優勝しないと、あの長宗我部社長が借金チャラにしてくれないだろうしねぇ・・・どうしたらいいじゃろ?」
「シロに言われても困るにゃ・・・」
「17歳の彼女は風邪で倒れたからって言って、あたしが代役です!って言えば、ハニパイの人たちも、しょうがないなぁ、じゃあお婆ちゃんよろしく!って、言ってくれないかな〜」
「言わないと思うにゃ・・・」
「そりゃ言わないよね〜〜」
その時、おヨネの部屋を誰かがノックした
ビクッとなるシロ、あわてて隠れた
「はい、どうぞ」

ドアを開けて入ってきたのは鹿児島ケン爺さん
部屋の中を見回して
「いま、誰かいたんじゃないのか?」
「誰もいませんよ、あたし一人」
ケン爺さんは勝手に部屋に入ってきて座った
「話し声が聞こえたが・・・」
おヨネ笑いながら
「うふふ、独り言ですじゃ」
「まあ、いい・・・あんたに頼みごとがあって来たんじゃ」
「あら、珍しい、ケン爺さんが人に頼みごとなんて、やっと世の中男女同権ってことが分かったみたいじゃね」
「ふん、そんなことはどうでもいい!あんたはロックバンドコンクールに出場するのか?」
「あ・・・ああ・・・そのつもりですじゃ」
「バンドは一人じゃ出来ん、あんたは誰とバンド組んでるんじゃ?」
「う〜〜〜〜ん・・・・内緒じゃ」
笑ってごまかすおヨネ
「ワシも出るつもりなんじゃが、どうしてもピアノが見つからないんじゃ、あんたピアノやってたと言っておったの?頼むことは出来ないかな?」
突然の話しに困るおヨネ
「あ・・・でも、あたしもバンドの練習で忙しくて・・・そんな・・・あっちもこっちもってわけには・・・」
「どこのバンドじゃ、ワシが直接頼みに言ってもいいんじゃが・・・」
「いや・・・それは・・・内緒のバンドなんで・・・教えるわけにはいかないんじゃよ・・・」
「内緒のバンド?・・・ホントにバンドやっとるのか?」
「やってます、だけど・・・それ以上教えるわけにはいかんのじゃ」
ケン爺さん、ムッとして
「・・・・嘘じゃな」
「えっ?」
「バンドやってるなんて嘘じゃろ!」
「嘘じゃないですじゃ・・・」
「・・・やっぱり噂は本当だったみたいじゃな」
「へっ?噂って、何のことですか?」
「・・・あんたが、いい歳こいて、若者と不純異性交遊しているという噂じゃ」

「ハァァァァァァァァァ?何の事じゃ?あたしがそんなことするわけないじゃろ?」
「若者の格好して、ミニスカートで町中を走りまわっておったというじゃないか」
おヨネ汗ダラダラ・・・
「いや・・・あれは・・・その・・・」
「あんたは楽園ホームのことなんかどうでもいいんじゃろ!バンドの練習とか言って毎晩若者と遊んでおるんじゃろう!このケダモノ!」
「ケケケケケケケ・・・・・ケダモノ?」
ケン爺さん立ちあがり
「あんたに頼みごとなんかしたのが間違いじゃった!ワシの力でコンクールは優勝してやる!」
ドアを引きちぎるように開けて振り返り最後の一言
「地獄に堕ちろ!」
壁が倒れるような勢いでドアを閉めて去っていった
蒼白になって座り込んでるおヨネ
隠れているシロは腰が抜けた

だんだんおヨネの顔が赤くなってきた
「あたしこそ優勝してやるわよ!見てなさい!」

つづく



 ある朝、楽園ホームにトラックが来た
車体には{岡間解体工事}と書かれていた
トラックは土ぼこりを上げながら乱暴な運転で玄関前に止まった
中から作業服を着たゴツい男が三人降りてきた
朝食を食べていたお爺さんお婆さんたちは吃驚!
あわてて管理人のおばさんが玄関を開けた
「あなたたちは何ですか?」
ゴツい男たちは意外と優しい物腰だった

「あたしたち、岡間解体工事の者です、この楽園ホームの解体工事の見積もりを取りにきましたのよ」
岡間解体工事の三人はオカマだった

「解体工事なんて、頼んでませんよ!」
「あら・・・そうなんですか?私たち、土佐カンパニーに頼まれてきたんですけど・・・」
「土佐カンパニー?何だいそれ?」
「土佐カンパニーの社長、長宗我部さんに頼まれたんです」
「長宗我部?・・・それは何かの間違いですね、楽園ホームはまだ私たちの物です!」
朝食中のお爺さんお婆さんたちも玄関に集まってきていた
「そうよそうよ!ここはあたしたちのお家よ!」
「オカマはさっさと帰りなさい!」
「解体なんかされてたまるもんですか!」

岡間解体工事の三人オドオドしながら
「あらやだ〜オカマだからって馬鹿にしないで、オカマ怒らせると怖いのよ」
お爺さんお婆さんたちは声をそろえて
「帰れ帰れ〜〜」と叫んだ

「あら、ケンさんじゃないの!」
岡間解体工事の三人の中で一番老けた感じのオカマが鹿児島ケンを見つけて声をかけた
他の二人のオカマも、ケンを見つけて
「あらケンさん、ここに住んでたの〜〜最近来てくれないのね〜〜」
「ケンさん、またチークダンス踊りましょう〜〜」
「あらやだ〜〜、またお店に遊ぶに来てくださいね」
玄関から覗いていたケンさんあわててホーム内に戻った
一同「?」と、老けたオカマを見た
「お店って?」管理人のおばさんが聞いた
「岡間解体工事の社員は夜は岡間ショーパブで働いてるのよ」
「ケンさんは週に一度は来てくれてたのに、最近ご無沙汰なのよね〜」

一同唖然
「意外ね・・・ケンさん・・・まあ、そんなことはいいわ!取りあえず見積もりは結構です、お帰りください」
岡間解体工事のオカマたち、あっさりと帰って行った
「どんだけ〜〜〜〜〜」

その姿を二階の部屋からニヤついて眺めていたのは、高知金五郎だった
彼は背広を着ると、いつものように町へ出かけた

楽園ホームから町までは下り坂
30分ほどで町の中心部にたどり着く
最近、高知は毎日のように町へ出かける
時間は朝だったり、夜だったりするが、必ず一度は出かけている
町への下り坂を歩きながら携帯をかける

「ああ・・・ワシだ・・・連絡は?・・・ふむふむ・・・分かった、あいつはもうダメだな・・・追いこみかけろ・・・今から行く」

坂の下から、自転車を押しながらおヨネ婆さんがやってきた
坂の途中で立ち止まる両者
「おや、高知さん、今日もお出かけですか?」
「そういうあんたこそ、毎日出かけているようだな・・・バンドの練習か?」
「あ・・・ああ・・・もちろん、そうですじゃ、長宗我部とかいう金の亡者に楽園ホームを渡すわけにはいきませんからね」
「金の亡者か・・・ふふふ・・・世の中金が一番なんじゃよ、おヨネさん、あんただって、金があればあんな汚いホームじゃなくて、もっと立派な老人ホームに入れるんじゃないのかい?」
「あたしは、楽園ホームが好きなんじゃ」
「ふふふ、あんたにゃぴったりだよ、汚い楽園ホームがな、ぐはは」
嫌味を言いながら坂を下っていく高知爺さん
おヨネ見送りながら
「相変わらず嫌な爺さんじゃ・・・もっと優しい気持ちを持てば、みんなと仲良くなれるのに・・・残念じゃのう・・・」
自転車を押しながら登っていくおヨネさん

町中に{土佐カンパニー}という金融会社がある
最近出来たばかりだが、今ではビルの全フロアを借り切っている
そのビルに入っていく高知爺さん
ビルの最上階に社長室がある、そのドアを開ける高知
社長室のソファに寝ころんでいた黒猫が起き上がり、高知の足にまとわりついてきた
社長質の窓から、山腹にある楽園ホームの屋根が少し見える
「今に見てろ・・・あそこはもうすぐ私の物だ・・・ぐはは・・・」


つづく








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