「あたし、働きに行きたい」
夕食の時、詠子が突然言った
俺は思わずコロッケを喉に詰まらせた
「働く?なぜだ?」
「だって、毎日家にいてテレビ見て、おじさんの食事の世話をして、時々健司くんと三人で日比谷野音行ったり、フォークコンサート行ったりだけの毎日なんて、退屈!他に友達も居ないし、おじさんと健司くんと遊んでたって、面白くない、もう飽きた」

「・・・そうか・・・じゃあ、高校行くか?」
「今更、高校なんて行きたくない、元々勉強なんて好きじゃないし、働く」
「働くって言っても・・・何かやりたいことあるのか?」
「もう、面接してきたんだ」
詠子がハガキを出した
採用通知だ

「タツノコプロ?なんだこれ?」
「アニメ会社よ、ハクション大魔王作ってる会社」
「ハクション大魔王・・・聞いたことはあるな・・・そこで何して働くんだ?詠子は漫画なんか描けないだろう?」
「ペイントよ、色を塗るの、誰でもできる仕事だって言ってたわ」
「誰が?」
「面接してくれた吉田竜夫社長」
「ふ〜ん・・・」

今は、俺がパチンコで稼いでくる金だけが、収入だった
ちゃんと就職して働けば、もっと稼げるのだが、そうすると、当初の目的を達成することが難しくなってくる・・・

当初の目的!
詠子と健司を恋仲にすること!

最近ちょっと当初の目的を忘れているかもしれない
いけないことだ・・・

俺の叶えられなかった夢を健司に叶えてもらおうと、フォークシンガーに拘りすぎたかもしれない・・・

ここで、詠子がアニメ会社で働きだすと、健司と合う時間が減ってしまうかもしれない・・・
それでは、目的が達成できない・・・

俺は考えた・・・・・・・・・・・・・・

「よし!分かった!」
「許してくれるの?ありがとうおじさん!」
「俺が代わりに働きに行く!」
「えっ?・・・どういうこと?」
「俺が代わりにタツノコプロでペイントの仕事をする!」
「何言ってるの?おじさん・・・ペイントは女子だけなの、男は募集してないのよ」
「ホントか?そりゃ男女差別だぞ!」
「もし・・・男でも良くたって、50過ぎのおじさんなんか雇ってくれるわけないでしょ」
「・・・そうか・・・」

「許してくれないのだったら、家を出ます!」
「わ・・・分かった・・・」
結構気が強いんだ、詠子は・・・


翌日から詠子は嬉々として働きに出かけた

俺は一時間ほどしてから、前もって調べておいた住所に出かけた
国分寺市鷹の台だ!

駅から10分ほど行った畑の中にタツノコプロダクションのスタジオがあった
建物の前に立って、ジロジロ眺めていると、扉を開けて汚い格好の若い男が出てきた
彼は胡散臭そうに俺を見ているので、落し物を探しているふりをした
「え〜と・・・ここらへんに・・・」
彼はスタジオ横の駐車場に歩いて行った
次にガタイのいいやくざ風の若い男が出てきた、やくざ風の若い男は俺をジロッと睨んだ
・・・殺される!・・・
一瞬ビビった
「案納さん、こっちです」
汚い格好の若い男が、やくざ風の男に声をかけた
「おう!」
案納さんと呼ばれた男はそう言って、車のほうに歩いて行った
・・・助かった・・・

アニメ会社はもしかして恐ろしいところかもしれない・・・
詠子を働かせていいのだろうか?

二人を乗せた車が走り去ったので、俺は気を取り直してスタジオの扉を開けた


つづく


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