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 鷹の台のタツノコスタジオ
扉を開けて中に入る
玄関の両側に靴箱が置いてある
俺は靴箱を適当に開け、スリッパを取り出して履いた
右側が受付みたいになっていたが無視して中に入り、カタカタと音のする部屋のドアを開けた

暗く狭い部屋に何人もの人が集まって、フィルムを見ていた
映写機の音だけが狭い部屋に響き渡る
最前列に座っていた人が叫んだ
「そこ戻して!」
映写機を操作していた人がフィルムを戻して再度流した
「あっ!そこそこ、肩がパカってる」
周りの人々から同調する声が上がる
「カット53、大魔王の肩パカ」
「はい!」
ヒゲ面の若い男が何か記入する
またフィルムが流れ出し、同じことを繰り返していく
「カット82、セル浮き!」
「カット139、パンガタ!」

フィルムを見ているうちに思い出した
これは(ハクション大魔王)というアニメーションだ
今はみんなで間違いを探している途中ってことだ

フィルムが終わり、部屋に灯りが点いた
集まっていた人々は三々五々部屋から出て行った
痩せこけたヒゲ面の若い男に何か指示していた人は、横に座っている小さい人に顔を向けた
「笹川さん、あそこのカット、どうですか?やっぱり直したほうがいいですかね?」
笹川さんと呼ばれた30過ぎくらいの小さな人は穏やかそうな表情のまま
「いいんじゃない、大丈夫でしょ、いい感じに上がってますね、さすがは資祐さんです」
資祐さんは照れくさそうに笑った

資祐さんとヒゲ面の男は忙しそうに部屋を出て行った
「すぐにカット用意します!」
ヒゲ面の男の声が聞こえる
笹川さんはフラッと立ち上がると、そのまま奥の部屋をのぞいて、誰かに声をかけて笑っている

映写機のある部屋は6畳くらいの広さの中に長テーブルが一つ置かれていた
壁際には、俺の知らない機械が並んでいる
見回しながら立っていると、笹川さんが戻ってきて、俺の前で立ち止まった
「あなたは?」
笹川さんは俺の顔を見て首を傾げ、急に思い出したように
「ああ・・・新しく入った作画の人ですか?」
「はい、そうです!山田健司郎です!よろしくお願いします」
俺は右手を差し出して強引に握手した
笹川さんの小さな身体がヨロケた
「はい、そうですか、よろしくお願いします・・・」

「笹川くんは、ここで何の仕事をしてるの?ペイント?」
笹川さんの正体を知らない俺は、年下の男に気楽に聞いた
笹川さんはびっくりした顔して俺を見た
「あ・・・あの・・・監督しています・・・」
「監督!?」
監督と言えば、世の中で一番偉い人間!俺はびっくりして平伏した
「失礼いたしました!まさか監督だとは思わず、ご無礼の数々お許しください!」

笹川さんは笑いながら
「ハハハ、いいんですよ、気にしないでください」
笹川さんは若いのに立派な人だと、俺は感心した

俺はそれから堂々とスタジオ内を徘徊した
しかし・・・昼過ぎなのに、あまり人が居ない
机の下で寝ている人もいる
仕事している人に聞いてみると、みんな夜になると出てくるらしい
漫画家の生活と似ているようだ・・・

しかし、みんな若い
スタジオ内で出会う人たちはみんな俺より年下だ
薄汚れているが、何か溌剌として自信に充ち溢れている
それがアニメスタジオで働く人々の特徴のようだ
何気なく梁山泊ってこんな雰囲気だったのかもしれないな・・・と思った

スタジオ内が迷路のようになっているので、うろついているうちに迷子になってしまった
途方にくれていると若い女の子が部屋から出てきたので声をかけた
「あの〜ここに田中詠子さん働いてませんか?」
「ああ、居ますよ、こっちです」
連れて行かれた狭い部屋で、詠子は机に向かってカンちゃんの色を塗っていた
「おじさん!こんなところで何してるの?」
詠子はびっくりした

「いや・・・ちょっとな、見学に来たんだ」
「やだ〜〜ストーカーみたいな真似しないでよ〜〜」
ちょっと機嫌が悪い
「分かった、すぐ帰るよ」
俺はあわてて部屋を出て階段降りて行くと、玄関に出た
受付前のソファに笹川さんと背広姿のちゃんとした人が座って話していた
俺は軽く頭を下げながら二人の前を通り過ぎ
思いついて声をかけた

「笹川さん」
笹川さんと背広の人が俺を見た

「私の知り合いにドロンボーっていう泥棒の三人組が居るんですよ、そいつらはインチキ商売で金を貯めてロボットを作っては悪さをするんです」
笹川さんと背広の人はポカンと俺を見ている

「ドロンボーのライバルが、ヤッターマン1号2号って言うんです、面白そうでしょ?それじゃさようなら」
俺は外に駆けだした

笹川さんが背広の人に声をかけた
「社長・・・今の人、社長の知り合い?」
「いや・・・笹川さんの知り合いじゃないの?」
「さっき会ったばかりです・・・」
笹川さんと吉田竜夫社長は呆気に取られたまま閉まった扉を見つめた


つづく








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