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ホテルニューヨーク

 

ゆるキャラ刑事ムサッシーは今日も変わらず吉祥寺をパトロールしていた。

南口のソープランド前の通りからガードを越えて北口に出た。

喉が渇いたのでコンビニで缶コーヒーを買い一気に飲んだ。着ぐるみの中はけっこう暑いのだ。

「美味しいサッシー!」

ふと見るとコンビニ横の電柱の陰に女の子が立っている。

こんなところで客引きをしているわけじゃないだろうが、とりあえず声をかけてみる。

「どうしたサッシー?待ち合わせサッシー?」

女の子はムサッシーの姿を見て一瞬ギクッとしたが、慌てて駅の方向に歩き出した。

「気をつけて帰るサッシー!」

飲み終えた缶コーヒーをゴミ箱に捨てて、ムサッシーはトヨペットの方向へブラブラ歩いた。

吉祥寺も駅から離れると住宅街が広がっている。

都道七号線を左に曲がり、西友前をパトロールしているとスマホが鳴った。

「なんだサッシー?吉祥寺シアター前で喧嘩?いま行くサッシー!」

ヨドバシカメラ横の道を走る。しかしゆるキャラの足はどうして短いのだろう?こういう時には不便だ。
通りに出ていた客引きたちが、ムサッシーが走ってくる姿を見てあわてて逃げ去った。

ホテルニューヨークの看板が見えてきた、交差点を越えれば吉祥寺シアターだ。

コンビニ横に先ほどの女の子が立っていて、また逃げようとした。

「待つんだサッシー!」

「御免なさい!何もしてません」

「キミは悪いことするような子には見えないサッシー、でも早く家に帰ったほうがいいよ、キャサリン」

「キャサリンじゃないですけど・・・」

「キミにはキャサリンって名前がぴったりサッシー」

「は・・・はあ・・・」

そう言いながらキャサリンはホテルニューヨークを見た。

「どうしたサッシー?」

「健太さんが・・・健太さんが知らない女の人とホテルに入ったんです・・・だから、出てくるのを待っていたんです・・・」

「何だってサッシー?」

吉祥寺シアターの喧嘩の事なんかすっかり忘れてしまったムサッシーは彼女の話を聞くことにした。

 

「会社の飲み会が終わって駅に歩いている時に、健太さんを見かけたんです。知らない茶髪の女の人と手を繋いで歩いていました。付けて行ったら、ホテルニューヨークに入ったんです・・・」

「なるほどサッシー」

「この前、健太さんのスマホ見ちゃったんです、アケミって女の人とメールのやり取りしてて・・・アケミさんからの、私たち付き合ってるよね?ってメールに、友達以上恋人未満かなって返事してたの・・・ホテルに入った女の人がアケミさんだと思います・・・」

 

・・・友達以上恋人未満って、セフレって事だろ!?・・・

 

ムサッシーの中の人が歯ぎしりしながら怒った。
でも、表面上はニッコリしたまま。ここらへんが着ぐるみの良いところだ。

「キャサリンはどこに住んでいるサッシー?」

「キャサリンじゃないけど・・・緑町です」

「よし!武蔵野市民の平和を守るのがムサッシーの役目サッシー!」

その時、ホテルニューヨークから腕を絡ませたチャラそうな男と茶髪女が出てきた。

「あいつが健太かサッシー?」

「そうです・・・」キャサリンはムサッシーの後ろに隠れて呟いた。

駅の方に歩いて行った二人の後を付けて、カラオケBOXの前で声をかけた。

「健太さ〜〜〜ん」

ムサッシーは精一杯のアニメ声で呼びかけた。ちょっとオカマみたいだけど、それは仕方ない。

「えっ?」

健太はギクッと振り向いた。

「健太さ〜〜ん、待ってサッシー。今日はムサッシーの部屋に泊まるって言ってたじゃないのサッシー」

「えっ?なに?」

茶髪女が口を尖らして「なにこのゆるキャラ?」と健太の腕を握り締めた。

「し・・・知らないよ」

「やだやだサッシー、友達以上恋人未満だってメールくれたじゃないサッシー」

「あたしにくれたメールと同じじゃないの?あんたゆるキャラとも付き合ってるの?」

「そ、そんなわけないだろ!知らないよこんな奴!」

ムサッシーは健太に抱きついて嘴を押し付けた。

「キスしてサッシー」

茶髪女は顔をふくらませて「ヘンタイ!」と怒鳴ると駅に向かって走り去った。

「あ・・・ちょっと待ってくれよ〜」

ムサッシーに抱きつかれているので健太は追いかけられない。

「は、放せよ!」

振り向いた健太がムサッシーの後ろにいるキャサリンを見つけた。

「えっ?どうしてここに?」

ムサッシーは健太を放すと、振り向いてキャサリンの肩に優しく手を置いた。

「あとは二人で話し合うサッシー」

「はい」

キャサリンは力強く頷いた。

「ありがとうムサッシー」

「武蔵野市民の平和を守るのがムサッシーの役目サッシー!恋は戦いだキャサリン」
「・・・キャサリンじゃないけど・・・」

呆然としている健太と苦笑するキャサリンを残して、ムサッシーは駅方向に歩き出した。

「民事不介入サッシー!」

 

今夜も武蔵野市は平和だ。


 

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  • 21:03
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Comment
とても楽しく読ませて頂きました!笑

ぼくも武蔵野市に縁あるものなので、かなり情景が浮かびます。次回作用にパトロール先をリクエストしたいです(`_´)ゞ

ムサッシーの中の人が歯ぎしりしながら怒った....笑!!
  • なお
  • 2015/02/26 23:44





   
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