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ゆるキャラ刑事ムサッシーはその日非番であったが、着ぐるみで出かけた。

いせやの焼き鳥を食おうと思い、吉祥寺駅南口からパープル通りをブラブラ歩いて行った。すると野外ステージの方から子供たちの歓声が聞こえてくる。

焼き鳥を食べながら近づいてみると、ステージにゆるキャラたちが並んでいた。

 

名前を聞いたことも無い様な着ぐるみが四体、媚びたポーズを取っている。

タヌキみたいな着ぐるみ、ウサギみたいな着ぐるみ、熊みたいな着ぐるみ、何だか分からない着ぐるみの四体だ。

「なんか田舎くさい連中ばかりだサッシー」

 

ムサッシーの声を聞いた生意気そうな子供が振り返って「お前はあそこに行かねえのかよ」とムサッシーの腹を蹴ったので、ムカついたムサッシーは思いっきり頭を叩いてやった。

「ぎゃああああ!こいつが殴った!」
子供が大声上げて泣いたので、
あわてて現場から逃走しようとした時。

ステージ前方から大きな笑いが起こった。見ると、タヌキみたいな着ぐるみがうつ伏せになって倒れている。

ステージ上の司会者も他の着ぐるみたちも、笑いを取るためにワザとやったのだろうと思ったらしく、助け起こす事もしないで笑っている。

 

「うんサッシー?」

ムサッシーは嫌な予感がした。

 

1分経っても、倒れたタヌキみたいな着ぐるみはピクリとも動かない。

ステージ前の客たちも、笑いをやめざわついている。

 

「管轄外だが!武蔵野市の平和を守るゆるキャラ刑事ムサッシーだ!」

叫びながらステージに駆け上がり、タヌキみたいな着ぐるみの背中のジッパーを下ろした。すぐに目に飛び込んできたのは刃渡り30センチほどの包丁と真っ赤になった背中だ。

それを覗き込んだ司会者と他の着ぐるみたちから悲鳴が上がった。

 

客たちから包丁は見えないが、只事では無いと思ったのだろう。悲鳴を上げながら子供たちを連れてステージから離れて行った。

「着ぐるみ殺人事件サッシー!」

 

つづく

 

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