深夜、ポコポコ王女は寝室のベッドのなかで待っていた
「あのウサギ野郎!いつまであたしを待たせるつもりだい!イライライライラ・・・」
電話が鳴った
王女は受話器を取った
受話器の向こうからチェット・ベイカーの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」が聞こえてくる
あの野郎!またBARに居やがる!
「・・・ポコポコ王女ですか?」
おびえた声で囁くウサギ探偵
「ふざけんな!耳長野郎!なんでBARに居るのよ!さっさとお城に来なさい!」
「王女、そんなに大きな声を出さないでください、周りに聞こえてしまいます・・・行きたいのは海海なんですが・・・いや山々なんですが、ちょっとまずいことになっちゃって・・・」
「何がまずいことよ!あたしを怒らせてることのほうが、よっぽどまずいんじゃないの!」
「すいませんすいません、あっ・・・王女、また掛け直しま・・・」ツーツーツー
唐突に電話が切れた
頭にきた王女は壁に頭突きした
ボコボコボコ!
壁に穴が開いた
それでもイライラが収まらないポコポコ王女は、カーバー王子をいじめるために寝室を抜け出した
カーバー王子は「ガーガー」鼾をかきながら寝ていた
大きな鼻の穴に花瓶を入れてみた
「ガピーガピー」
鼾の音が変わった
ポコポコ王女はおかしくて、声を出さずに腹を抱えて笑った
今度は反対の鼻の穴に脱ぎ捨ててあった靴下を突っ込んだ
「ガピュウ〜〜〜〜〜ガピュウ〜〜〜〜」
空気が抜けたような音に変わった
ポコポコ王女はおかしくて、声を出さずにベッドの周りを転げ回った
突然鼻の穴のから靴下が飛んだ
「ガピーガピー」
ポコポコ王女はおかしくて、声を出さずに笑って死にそうになった
今度は両方の鼻の穴に脱ぎ捨ててあったズボンと服を突っ込んだ
「グルルル〜〜〜グルルル〜〜〜」
苦しそうな鼾に変わった
もう耐えられない王女は声を出して笑って
「キャハハハハハハハハハハハハ〜〜〜」
あわてて寝室を飛び出した
苦しくて目が覚めたカーバー王子は鼻の穴から花瓶とズボンと服を取りだした
「・・・なんで?・・・」
そう呟いてまた寝た
笑いながら寝室に戻ったポコポコ王女
待っていたように電話が鳴りだした
「また、あいつか!」
受話器を取ると怒鳴った
「てめえこの野郎!てめえの耳を一口大に切って、オクラと一緒に茹でてポン酢とサラダ油と混ぜてちりめんじゃこと鰹節加えて、ウサギの耳とオクラのおじゃこ和えにしてやるぞ!」
受話器の向こうでしばしの沈黙があり
笑声とともに懐かしい声が聞こえてきた
「それは美味しそうですね、ポコポコ王女」
トラのジョーの声だった!
「トトトトトトトト・・・トラのジョー!」
「そうです、ジョーです、ご無沙汰しています、ポコポコ王女は相変わらずですね」
急に乙女のようになる王女
「あああああの・・・・急に居なくなってしまうから・・・心配していたんですよ・・・いまどこに居るんですか?」
「それを言うわけにはいきません・・・王女にお願いがあるんですが、よろしいですか?」
「はいはいはい!何でもお願いしてしてして〜〜〜お金でも何でもあげますわよ〜〜〜」
「ハハハ・・・あんたたち金持ちは、何でも金で解決できると思っているんですね」
「えっ?そうじゃないんですか?」
「私のお願いと言うのは、私のことを調べないでいただきたいと言うことです、
アライグマ騎士団はいま私たちの本拠地で牢に閉じ込められています、
ウサギ探偵はちょっと取り逃がしてしまいましたが、早晩私たちが捕まえるでしょう」
ポコポコ王女には何のことだかちっとも分からなかった
「私たち???私たちって何のことなんですか???」
「私はポコポコ王女に、無駄なことは止めなさいと忠告するために、電話したんです」
無駄なこと?忠告?ポコポコ王女にはちんぷんかんぷん
「私は、王制を倒すために立ち上がった社会革命党の同志なんです!」
「へっ?王制を倒す???王制って何?」
電話の向こうで馬鹿にするような笑い声が聞こえ
「あんたみたいな馬鹿な王女に話しても無駄だったな!とりあえず私を探すのは止めたほうがいい、その前に自分の身を心配したほうがいいだろう」
急に怒りがこみ上げてくる王女
「馬鹿な王女だと〜?ふざけんなシマシマ野郎!てめえなんか六等分のくし切りにして爪楊枝刺して、ニンニクと赤唐辛子と一緒にオリーブ油で焼いて塩振りかけて、ワインに合う焼きトラにしてやる!」
受話器をぶん投げて
壁じゅう頭突きした
ボコボコボコボコ!
「ジョー!待っていなさい!あんたなんかトラ刈りにしてやる!」
ジョーに対する愛情が憎悪に変わってしまったポコポコ王女!
夜空に吠えた
「ウォォォォォォ〜〜〜〜〜ン」
なんだかよく分からないうちに当初の目論見とは関係なく
お話しは難しい方向に流れようとしているが・・・
これで面白くなるのだろうかと、気をもんでいる作者なのでありました・・・
つづく