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 朝
ウサギ探偵はお城目指して歩いていた
そこはBARや居酒屋が並ぶ一画
新宿で言えば歌舞伎町・・・と言うよりゴールデン街
ちょっと寝不足でフラフラな探偵

横の狭い通りから急に人影が飛び出してきた
「うわっ!」
昨夜、社会革命党の連中に追いかけられてひどい目に合った記憶が蘇ってきた
「あら・・・あんただったの」
酒焼けのその声は、デートクラブの白猫、モンローだ
「モンローかよ・・・脅かすなよ・・・俺はいま気が弱ってんだ」
「あら、珍しいわね、あんたでもそんな時があるんだ、まあいいわ、コーヒーでも奢ってよ」
「そんなヒマないんだ、用事があるもんでね」
「じゃあ、あたしも一緒に行く、だってヒマなんだもん」
「ダメだよ、モンローを連れていける場所じゃないんだから」
「いいじゃん!」
ウサギ探偵の腕にしがみ付いてくるモンロー
仕方なくモンローを連れたままお城を目指した

お城への坂道を登るウサギ探偵
「どこ行くの?まさかお城?」
「だから、モンローを連れて行けるところじゃないって言ったじゃないか」
「あんたがお城に用事あるの?何の用?お金借りに行くわけじゃないよね?」
「まあ、似たようなもんだけどな・・・」

門の衛兵に名前を告げると、何も言わずに門を開けた
「あら、あんたすごいのね〜〜!」
関心するモンロー
衛兵に案内されてお城に入った
モンローはあちこち見まわしながら興奮していた
「すごい建物ねぇ〜〜、あたしもこんなところに住みたいわぁ〜〜」

大きなドアの前で一同立ち止まった
「王女様、ウサギ探偵を連れてまいりました」
「どうぞ〜〜〜!」
中から王女の声が聞こえた

ソファにグッタリ座っている王女の額に大きな絆創膏が貼ってあった
「王女!どうしたんですか?」
「何でもないわよ・・・それより、そのおばさん誰?」
モンロー大きな声で笑って
「おばさんじゃないわよ、モンローって呼んでください、王女様」
深々と礼をした
モンローを無視して
「なんで一人で来ないのよ?」
「申し訳ありません、こいつが一緒に来るってうるさいもんで、まあ、気にしないでください、王女様がお探しのトラのジョー・・・」
「そのことはもういいわ!もう分かったから」
「へっ?どういうことですか?」
「昨日電話があったのよ、ジョーから直接」
二人の会話の間、モンローは部屋の中をうろつきまわっていた

「そそそ!そうなんですか?なんと大胆な奴」
「だから、あんたはもう必要ないの、金は振り込んでおくわ、さようなら」
「えっ・・・そうなんですか・・・なんだ、つまんないな・・・もっとなんか仕事ないですかぁ?掃除でも洗濯でも、何でもしますけど・・・」
「・・・仕事ねぇ・・・」
「お願いします、最近不景気で実はあんまり仕事無いんですよ・・・」
ポコポコ王女、大きく欠伸しながら
「・・・いいわ、仕事あげましょう」
「ありがとうござんす!そうこなくちゃ」

「社会革命党についての情報が欲しいの、どんな些細なことでもいいわ、調べて頂戴」
「分かりました、早速・・・しかし・・・」
「しかし何なのよ?」
「トラのジョーを探っている時、革命党の連中に見つかってしまって・・・顔が割れているんですよ・・・あたしが表立って動くわけにいかないので・・・誰か相棒が必要なんですなぁ・・・そのお金も・・・」
「がめついわね、分かったわ、幾らでも請求しなさい、その代わり、月末〆の翌々月の25日払いね」
「厳しいなぁ〜〜、でもまあ仕方ありませんそれでいいでっしゃろ、おいモンロー帰るぞ!」
「はい」
モンロー腰を振りながらウサギ探偵のそばまで戻ってきた
「お邪魔しました」
ドアを閉めて帰って行く二人

途端にムセる王女
「なんか安い香水の匂いがするわね〜〜あの女!」
あわてて窓を開けて大きく息を吸い込んだ

お城から出て行くモンローとウサギ探偵
急にモンローが振り向いて王女に気付くと、手を振った

・・・なんか嫌なおばさんね・・・

変な胸騒ぎがするポコポコ王女であった・・・


つづく



 早朝
壁に何かを打ち付ける音でカーバー王子は目を覚ました
寝室のドアのそばで、ポコポコ王女が壁に頭を打ちつけている
周りを見渡すと床から同じ位置に穴が開いている、ちょうど王女の頭の位置だ
カーバー王子は唖然と見ていた

「ふぅ〜〜〜」
ため息ついてポコポコ王女が振り返った
額が血だらけだ
「王女!どうしたんですか?」
ポコポコ王女ニヤッと笑って
「どうもしてません」
「あっ・・・そうですか・・・」
カーバー王子、逆らう気力も出なかった

ポコポコ王女はベッドの端に座って
「カバに聞きたいことあるんだけどさ・・・」
「えっ?何のこと?」
「車貝核迷刀・・・いや、違った・・・社界各名糖・・・斜階角姪塔?あれっ何だったかな?」
「社会革命党のことかな?」
ポコポコ王女グリッと首を回してカーバー王子を見て、ニヤッと笑った
カーバー王子の脇の下をべとついたピンクの汗が流れた
「そうよ、社会革命党よ・・・知ってるの?」
「ああ・・・噂には聞いているよ・・・王制を倒そうとしている集団だ、つまり、我々の敵ってことだね」
「敵か・・・やっぱりね・・・」
「それが、どうかしたのかい?」
「自分の愛する人が・・・初めて出会った愛する人が・・・自分の敵だったとしたら・・・カバはどうする?」
「んん?・・・質問の意味がよく分からないな?」
「まあ、いいわ・・・邪魔したわね」
額の血を手の甲で拭ってベッドのシーツになすりつけて、ポコポコ王女は出て行った
「ポコポコ王女・・・変わってるとは聞いていたけど・・・なんか引きつけられるのはどうしてだろう・・・」

ポコポコ王女は決心していた
トラのジョーがそう来るなら、あたしにも考えがあるわ
売られたケンカは買わなくちゃ・・・

社会革命党の追手から逃れたウサギ探偵は、いつものBARとは違うBARで朝を迎えた
トラのジョーからポコポコ王女に直接電話が行ったことはウサギ探偵は知らなかった
とりあえずジョーについての情報をポコポコ王女に知らせなければ・・・そう考えた
昼間だから雑踏に紛れていれば、革命党に見つかることもないだろう・・・
そう思いBARを出た
朝日がウサギ探偵の目に沁みる

まず、お城に行こう・・・

ウサギ探偵は早足でお城を目指した


つづく







 深夜、ポコポコ王女は寝室のベッドのなかで待っていた
「あのウサギ野郎!いつまであたしを待たせるつもりだい!イライライライラ・・・」
電話が鳴った
王女は受話器を取った
受話器の向こうからチェット・ベイカーの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」が聞こえてくる
あの野郎!またBARに居やがる!
「・・・ポコポコ王女ですか?」
おびえた声で囁くウサギ探偵
「ふざけんな!耳長野郎!なんでBARに居るのよ!さっさとお城に来なさい!」
「王女、そんなに大きな声を出さないでください、周りに聞こえてしまいます・・・行きたいのは海海なんですが・・・いや山々なんですが、ちょっとまずいことになっちゃって・・・」
「何がまずいことよ!あたしを怒らせてることのほうが、よっぽどまずいんじゃないの!」
「すいませんすいません、あっ・・・王女、また掛け直しま・・・」ツーツーツー
唐突に電話が切れた
頭にきた王女は壁に頭突きした
ボコボコボコ!
壁に穴が開いた
それでもイライラが収まらないポコポコ王女は、カーバー王子をいじめるために寝室を抜け出した

カーバー王子は「ガーガー」鼾をかきながら寝ていた
大きな鼻の穴に花瓶を入れてみた
「ガピーガピー」
鼾の音が変わった
ポコポコ王女はおかしくて、声を出さずに腹を抱えて笑った
今度は反対の鼻の穴に脱ぎ捨ててあった靴下を突っ込んだ
「ガピュウ〜〜〜〜〜ガピュウ〜〜〜〜」
空気が抜けたような音に変わった
ポコポコ王女はおかしくて、声を出さずにベッドの周りを転げ回った

突然鼻の穴のから靴下が飛んだ
「ガピーガピー」
ポコポコ王女はおかしくて、声を出さずに笑って死にそうになった
今度は両方の鼻の穴に脱ぎ捨ててあったズボンと服を突っ込んだ
「グルルル〜〜〜グルルル〜〜〜」
苦しそうな鼾に変わった
もう耐えられない王女は声を出して笑って
「キャハハハハハハハハハハハハ〜〜〜」
あわてて寝室を飛び出した

苦しくて目が覚めたカーバー王子は鼻の穴から花瓶とズボンと服を取りだした
「・・・なんで?・・・」
そう呟いてまた寝た

笑いながら寝室に戻ったポコポコ王女
待っていたように電話が鳴りだした
「また、あいつか!」
受話器を取ると怒鳴った
「てめえこの野郎!てめえの耳を一口大に切って、オクラと一緒に茹でてポン酢とサラダ油と混ぜてちりめんじゃこと鰹節加えて、ウサギの耳とオクラのおじゃこ和えにしてやるぞ!」
受話器の向こうでしばしの沈黙があり
笑声とともに懐かしい声が聞こえてきた
「それは美味しそうですね、ポコポコ王女」
トラのジョーの声だった!
「トトトトトトトト・・・トラのジョー!」
「そうです、ジョーです、ご無沙汰しています、ポコポコ王女は相変わらずですね」
急に乙女のようになる王女
「あああああの・・・・急に居なくなってしまうから・・・心配していたんですよ・・・いまどこに居るんですか?」
「それを言うわけにはいきません・・・王女にお願いがあるんですが、よろしいですか?」
「はいはいはい!何でもお願いしてしてして〜〜〜お金でも何でもあげますわよ〜〜〜」
「ハハハ・・・あんたたち金持ちは、何でも金で解決できると思っているんですね」
「えっ?そうじゃないんですか?」
「私のお願いと言うのは、私のことを調べないでいただきたいと言うことです、
アライグマ騎士団はいま私たちの本拠地で牢に閉じ込められています、
ウサギ探偵はちょっと取り逃がしてしまいましたが、早晩私たちが捕まえるでしょう」

ポコポコ王女には何のことだかちっとも分からなかった
「私たち???私たちって何のことなんですか???」
「私はポコポコ王女に、無駄なことは止めなさいと忠告するために、電話したんです」
無駄なこと?忠告?ポコポコ王女にはちんぷんかんぷん
「私は、王制を倒すために立ち上がった社会革命党の同志なんです!」
「へっ?王制を倒す???王制って何?」
電話の向こうで馬鹿にするような笑い声が聞こえ
「あんたみたいな馬鹿な王女に話しても無駄だったな!とりあえず私を探すのは止めたほうがいい、その前に自分の身を心配したほうがいいだろう」

急に怒りがこみ上げてくる王女
「馬鹿な王女だと〜?ふざけんなシマシマ野郎!てめえなんか六等分のくし切りにして爪楊枝刺して、ニンニクと赤唐辛子と一緒にオリーブ油で焼いて塩振りかけて、ワインに合う焼きトラにしてやる!」
受話器をぶん投げて
壁じゅう頭突きした
ボコボコボコボコ!
「ジョー!待っていなさい!あんたなんかトラ刈りにしてやる!」
ジョーに対する愛情が憎悪に変わってしまったポコポコ王女!
夜空に吠えた
「ウォォォォォォ〜〜〜〜〜ン」


なんだかよく分からないうちに当初の目論見とは関係なく
お話しは難しい方向に流れようとしているが・・・
これで面白くなるのだろうかと、気をもんでいる作者なのでありました・・・


つづく








 今日は25日
銀行に入金がある日だ
三件の振り込みをしなければいけない
しかし、ATMは大混雑
ここM銀行M支店はいつもこうだ
だいたいATMの数が少なすぎる
T支店のように幅の狭いATMにすれば、同じスペースであと二台は増やせる
そうすれば、40分待つところを35分で済むかも知れない
いや、うまくいけば30分で済むかも・・・
この10分って言うのが貴重なのだ!
時給950円なら158円ってところだ
158円を無駄にしていることになる
25日にATMを待っている人が100万人いるとしたら
1億5800万の時給が無駄になっているということだ!これは国家に取って大損失!
ああ・・・そこのおばちゃん、ATMの前に行く間に通帳とカードを用意しておくもんだよ!
まったく、イライラする!
横を見るとスーツ姿の中年の男が立っている
いつも思うのだが、この人たちは何だ?
もちろん、銀行の人間に違いない
こんなところにタバコ屋のおじさんが立っている訳は無い
澄まして立っているだけで給料もらっているのか、この中年男は!
そう思ったらイライラが爆発した!
「あのさ〜」
中年男に声をかけた
あわてて顔をこちらに向ける中年男
「はい、何か御用でしょうか?」
「いつも思うんだけど、この支店のATMの数少なすぎないか?どうしてもっと増やせないんだ?」
「はあ・・・申し訳ありません、もうしばらくお待ちください」
「あんたはそう言ってるだけで給料もらってるんだろうけどさ、俺たちは早く済ませて働かないと給料もらえないんだよ!」
だんだん調子に乗ってくる俺
「えっ?人の金預かって給料もらってるんだろう、あんたたち偉そうな顔してるけど、昔で言えば銀行なんて両替商だよな?一流企業みたいな幻想持ってんじゃねえのか?ふん!あんたみたいなジジイじゃ話にならない!おう!支店長呼べ支店長!」
ATMに並んでいる人たち全員が俺を見ていた。注目を浴びる俺
だって俺は間違えたことは言ってないからな!正論言ってるわけだから、この爺さんも反論できないだろう!
と、ちょっと気持ち良くなってきた時・・・
それまで「申し訳ありません」的な表情をしていた中年男が突然鬼のような形相になって怒鳴りだした

「うるせえ!バ〜〜カ!少しくらい待てないのか?そんなに正確な毎日を送っているのか?どうせ家に帰りゃゴロゴロ無駄な時間を過ごしているだけだろう!馬鹿野郎!ATM増やすのだって金がかかるんだよ!それくらい馬鹿なお前でも分かるだろう!客だからって威張るなくそ野郎!」
まさか逆襲されると思わなった俺は、口をポカンと開けたまま涎を垂らした

同じころ
N小学校で先生に文句を言っていた親が怒鳴り返された
「お前が馬鹿だから、ガキも馬鹿なんだよ!」

コンビニでは100円のガムを買って一万円札を出した客が唾を吐きかけられた
「コンビニは両替するとこじゃねえんだよ!」

電車遅延で待たされた客が文句を言うと駅員に殴られた
「電車は遅れるもんなんだ!遅れてほしくなかったら飛び込むな!」

テレビ局に抗議の電話した視聴者が脅された
「うるせえ!文句言うんなら見るな!てめえの家に火ぃ付けたるぞ!」

何かが変わり始めていた・・・




 ポコポコ王女

カーバー王子とその妹マナは、しばらくポコポコ王国に滞在することになった
ポコポコ王女としても、ヒマつぶしになるから「まあ、いいか」って感じ
昨夜もカバとふたりお城のバーで朝まで飲みながらカラオケしていた

しかし、妹のマナはちょっとウザい・・・

二日酔いで寝ているポコポコ王女、しかしそんなことにはお構いなく

「お姉さま〜〜」
ニコニコしながら部屋にやってくる
「サイクリング行きましょう〜〜」
「やだね、めんどくさい、あたし、二日酔いなんだからね、今にも吐きそうなのよ・・・なんでこんな時に、そんな疲れることしなくちゃいけないのさ?」
「お姉さま〜〜サイクリングは気持ちいいじゃないですか〜雲は白くてきれいですし、空は青くて清々しいですし、ほら、頬に風が当たって、なんか生きてるんだなぁって・・・そんな気がしませんか?」
「しないね!」
「騙されたと思って、一度だけ行きましょうよ〜〜」
なんかカチンとくるポコポコ王女
「あのさ〜、その、騙されたと思って・・・って言い方、なんかムカつくんだけど・・・あたしのこと騙してるの?」
「あらやだ〜お姉さま〜〜騙してなんかいませんよ〜私はただ、お姉さまと一緒に風に吹かれてみたいなぁぁぁぁって思ってるだけですわ」
「カバと一緒に行けばいいじゃないのさ」
「お兄様はちょっと・・・」
言い淀むマナ
「あたしと同じ二日酔いなんだね、仕方ないわね〜朝まで飲んでたから〜」
「いえ、そうじゃないんです・・・実は・・・乗れる自転車が無くて・・・」
「へっ?」

重さで潰れた自転車にまたがるカバを想像して、ポコポコ王女突然大爆笑
「ガハハハハハハ〜〜〜〜〜おかしいおかしい〜〜〜こんなおかしい話し聞いたことがないわ〜〜〜ガハハハハハハハ〜〜〜お〜〜〜い!ねずみ爺さん〜〜〜」
執事のねずみ爺さんチョコチョコ駆けてやってきた
「王女様お呼びでございまちゅか?」
ポコポコ王女笑いながら
「マナ、いまの話しねずみ爺さんにも聞かせてあげてよ〜マジ笑えるから」
「おや、どんなお話しでちゅかな?王女様がそんなにお笑いになるんでちゅから、よっぽど面白いお話しなんでちょうね?」
興味津津の目でマナを見るねずみ爺さん
でも、マナはムッとしていた
「お兄様を笑い物にするなんて、ポコポコ王女ひどいですわ」
「怒ることないじゃん、マナが言ったんだろ、あたしが言ったわけじゃないわよ」
マナ下向いて
「そうですわね・・・こんな話をした私がいけない子でした、ごめんなさい、それでは、サイクリングのお話しは無かったことにしてください」
気落ちしたマナ、帰ろうとした
「待ちなよ、あたしこそ笑って悪かったわ、サイクリング行くわよ、たまには運動するのも暇つぶしにはいいかもね、酒も抜けるかもしれないし・・・」
マナの表情とたんに明るく輝き
「そうですわ、たまに運動しないといけませんわ!だってお姉さまちょっと太り気味ですから」

ねずみ爺さんの顔色がブルーになった
そしてポコポコ王女の顔色は赤くなった
「太り気味?・・・あんた、いまそう言った?」

悪気の全然無い明るい笑顔でマナは言った
「はい、そうですわ、お姉さまは太り気味ですわ、少し運動なさって身体を絞ったほうが。よろしいですわ、ほら!私のように」
そう言ってクルッと回った

ポコポコ王女の怒りが爆発した
「出て行けこの野郎!出て行かねえとヒョウ汁にして食ってやるぞ〜〜〜〜!パンダにとってはこれが標準体重なんじゃああああああああああああああああああああ!」

びっくりして部屋から飛び出していくマナとねずみ爺さん

ポコポコ王女の叫び声は王国の端まで聞こえた・・・らしい

「だから、あの女嫌いなんだ・・・あ〜〜〜〜ムカつく!ムカつく!ムカつく!サルサル王子呼び出していじめてやろうかな・・・」

その時、電話が鳴った
「ん?サルサル王子かな?」
受話器を取ると、トラのジョー探しに行かせたウサギ探偵からの電話だった
「ポコポコ王女さまですか?」
「ああ、あたしだよ!」
「・・・ご機嫌悪いようですね・・・また後で電話しましょうか?」
「いいわよ!なんなの?ジョーは見つかったの?」
「はい・・・見つかりました・・・」
「マジ???ホントに見つかったの?嘘だったら耳切るわよ!」
「耳切るのは勘弁してください・・・でも、ホントですよ、詳しいお話しがしたいので、今夜お城に伺います」
そう言って電話は切れた

・・・トラのジョーが見つかった・・・

ポコポコ王女の胸に熱い物がこみ上げてきて・・・
吐いた・・・


つづく



 三途の川を進むおヨネ
もう少しで向こう岸につきそうな時
後ろから声が聞こえた
「おヨネさ〜〜ん」
「帰ってきて〜〜!」
「そってちに行くのはまだ早いわよ〜〜」
振り返ると、楽園ホームのみんなが叫んでいた
鹿児島ケンも管理人のおばさんも、さくらちゃんも双子のもみじとかえでも叫んでいた
ハニーパイリーダーの香川も叫んでいた、石川も山形も叫んでいた
クレイジーナイトのポールも、シロも神奈川マリも叫んでいた
小さな声で「おヨネさん」と言う声が聞こえた
振り向くと、亡くなった管理人のご主人が「おヨネさんは、まだ向こうにやることがたくさんあるんだから、こっちに来ないで帰りなさい」と優しく微笑んでいた

「分かったじゃ!あたしは帰ります〜〜〜!」

廃屋で戦うシロとマリVSクロ 
一匹と一人のハイパー攻撃が決まった
「トオリャアアアアア〜〜〜!」
吹っ飛ぶクロ
「ぶぶげぼげぶづ〜〜〜!」

勝敗は決した

おヨネ目覚めた!
元気よく起き上がった
しかし、お婆さんのままだ
とりあえずステージに走った!

ステージでは鹿児島ケンのバンドの演奏が続いていた
しかし、長宗我部が水筒に入れた睡眠薬が効いてきた
朦朧として欠伸をし始め、フラフラになってきたケン
ステージ袖におヨネが駆けこんできた
ケン爺さんと目が合った
ケン爺さんヨロヨロと袖までやってきた
「おヨネさん、タッチじゃ」
差し出した右手にタッチするとケン爺さん倒れて大鼾で寝た

「まかしときなさ〜〜〜い」

おヨネステージに飛び出した、17歳の衣装を付けた77歳のおヨネ婆さん
客席で見ていた楽園ホームの爺さん婆さんたちが立ち上がって歓声
唖然と見ながら演奏するケンバンドのメンバー
おヨネは歌詞なんか知らないから、スキャットで誤魔化しながら適当に「イエ〜〜!」とか「愛してるぜ〜〜」とか入れて歌った
77歳のおヨネと、平均年齢80歳以上のケンバンドの演奏はどんな若者の演奏よりも熱かった

演奏の間に、客席で息絶えていた高知金五郎爺さんが運び出されていた

優勝はクレイジーナイトだった
ポールの父親は人目も憚らずに泣いていた、その横で恥ずかしそうにしながらも、ポールはおヨネを探していた
ハニーパイのリーダー香川がポールに近づいて
「ポール、やっぱりお前たちはすごいや、素晴らしい演奏だったぜ」
「ありがとう、香川・・・ところで、ヨネちゃんはどこに行ったんだい?」
「分からないんだ・・・ヨネちゃんと同じ格好してる、あの婆さんに聞いても知らないって言うし・・・」
二人が見た先に、17歳の衣装を身に付けて爺さん婆さんに囲まれたおヨネが居た

「おヨネさんすごかったよ!」
「さすが、おヨネ婆さん!」
「優勝できなかったけど、カッコよかったよ」
爺さん婆さんたち興奮していた

そこに、シロを抱きかかえた神奈川マリが帰ってきた
おヨネを見かけて手招きした
駆けよるおヨネ
「マリちゃん、ありがとう」
「ヨネちゃん・・・シロに話しは聞いたわ・・・びっくりしちゃった、17歳の女の子に変身していた・・・」
あわててマリの口をふさぐおヨネ
「マリちゃん、そこから先は言わないで、お願いじゃから」
「ごめんなさい、内緒よね」
二人は顔を見合わせて笑った

その日から長宗我部社長が姿を現すことは無かった
高知金五郎と長宗我部が同一人物だってことを知る人は誰も居なかった
そして、17歳のヨネちゃんも居なくなった

楽園ホームに平和が戻った
週末には楽園ホームの庭でおヨネとケンバンドでライブをやって、その収益金を運営費にまわしたおかげで、ホームの運営は楽になった
時にはハニーパイも演奏に来てくれた、マリちゃんも一緒に・・・


♪この世は天国 なんかじゃない〜
この世は地獄 しんどいよ〜
早くポックリ 逝きたいよ〜
楽にポックリ 逝きたいよ〜

極楽 極楽 あの世は極楽
極楽ロックでイエ〜〜〜〜ッ!


おしまい






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