- 2017.12.22 Friday
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俺は健司に宿題を出してみた
「詩をかいてみろ!」
「詩?・・・書いたことないんだけど・・・」
「フォークシンガーになりたいんだろう?それだったら作詞できなきゃしょうがないだろう!人の作った歌ばかり歌っていてもダメなんだ、オリジナリティが無けりゃな」
「はい・・・分かりました・・・」
健司は自信無さそうに頷いた
俺も16歳の時に詩なんか書いたことが無い
だからこそ、俺が叶わなかった夢のために、健司を教育していくのだ
フォークシンガーになって、詠子の愛も勝ち取るのだ
詠子は最近テレビアニメばかり見ている
ちなみに1969年頃に放送していたアニメは
「どろろ」「忍法カムイ外伝」「もーれつア太郎」「紅三四郎」「ウメ星デンカ」「海底少年マリン」
「ひみつのアッコちゃん」「タイガーマスク」「サザエさん」「ハクション大魔王」「ムーミン」
「アタックNO.1 」「男一匹ガキ大将」
こうやって列記していくと、錚々たるアニメ群だ!
子どもたちには堪らない毎日だったんだろうなぁ〜
詠子と健司を何とか仲良くさせようと思っているのだが・・・
どうも、うまくいかない・・・
詠子はちょっと大人びたところがあって、ひとつ上の健司を子供っぽいと馬鹿にしている感じがある
年齢設定を間違えたかも知れない・・・
15歳の詠子じゃなくて13歳の詠子を連れてくれば良かった・・・
数日して健司から電話が来た
三鷹まで自転車で出かける
名曲喫茶「第九」で会う
「作詞出来ました」
そう言ってノートを広げた
この世は無常
つらいことばかり
こんな世の中 俺はいやだ
大人になんか なりたくない
子どものままで 俺はいるさ
戦争 戦争 戦争 大人は戦争ばかり
でも 子どもは幸せ
子どもだったら戦争しない
親の言うこと ウソばかり
親なんか信じられない
先生だって ウソばかり
世の中 ウソばかり
信じられるのは キミの笑顔
ラララ〜〜〜 ラララ〜〜〜〜
「・・・・・」
健司は身を乗りだして俺の顔色を伺っている
「どうですか?初めて書いたのに、けっこう良く出来たなって思ってるんだけど・・・」
俺はノートを閉じた
どう言ったらいいのか、俺は考えた・・・
誉めるべきか・・・
厳しく行くべきか・・・
誉めて調子に乗られてもムカつくし・・・厳しく言ってやる気を無くさせるのも困るし・・・
こういう時、俺は優柔不断なんだ・・・だからいつまでも、しがないエロ漫画家だったんだ・・・
「いいよ、最高だよ!」
取りあえず誉めることにした
「この調子で、どんどん書きなさい!書けば書くほどうまくなるぞ!間違いない!」
不安そうだった健司の顔が明るく輝いた
「ホント!?じゃあこれでレコードに出来る?」
ほら、やっぱり調子に乗った
「いやいや、まだまだ、レコードに出来る曲は100点満点じゃないとダメだ!いまはまだ・・・そう・・・80点くらいかな!100点目指して頑張ろう!」
急にがっかりする健司
「え〜〜、ダメなの?・・・」
「うむ!レコード業界は厳しいんだ」
「・・・100点満点の曲って・・・例えば?」
「そりゃ、もちろん、岡林信康の曲さ、あとは・・・ザ・フォーク・クルセダーズの(帰ってきたヨッパライ)とか・・・」
「・・・帰ってきたヨッパライより、いい詩だと思うけど・・・」
健司は不満そうだ
「自分で書いたものは、他人が評価するんだ、自己満足に陥っちゃいけない!もっとたくさん書けば、もっと良い詩がたくさん出来る!頑張れ健司くん!」
「・・・はい・・・」
「ちなみに・・・キミの親はウソばかり付いて、キミを騙すのか?」
「いや、とても優しい親ですよ、ギターも買ってくれたし」
愚問だった・・・
健司の親は、俺の親でもある・・・
俺の親はしがない地方公務員、騙されることはあっても、騙すほどの才覚は無い
「キミの詩に(親の言うことウソばかり)って、書いてあったけど?」
「ああ、そこですか・・・何となくそう書いたほうが、フォークソングっぽいかなって思っただけです・・・」
「そ・・・そうだね・・・」
なんか急に元の時代に帰りたくなった・・・
つづく