四角い箱のような家殺人事件
ポコポコ王女とトラのジョーが歩いていると
大きな四角い箱のような家があった、その周りで
ライオンのおじさんと
ハリネズミのおばさんと
山羊のお爺さんが困った顔をして佇んでいました
「カバさんはどこに行ったのだろう?」
「中にいるのかしら?」
「どうしてドアが開かないじゃ?」
「どうしたのですか?」
トラのジョーが聞いてみました
「この家にカバさんが住んでいるのですが、昨日から連絡が付かないんです」
「窓から覗いてみようとしてもカーテンが掛かっていて、中の様子が分からないんです〜」
「どうしたもんじゃろう?」
トラのジョーはドアをノックしてみました
中からは何の応答も無いが、テレビの音が聞こえる
トラのジョーはポケットから針金を取りだして鍵穴に突っ込んだ
数秒でカチリと音がして鍵は開いた
「さすが、トラのジョーね、まあ、どうしてそんな技術を持っているかは聞かないでおくわ」
トラのジョーはニヤリと笑ってドアを開けた
みんなが覗き込むと、部屋の中でカバさんが死んでいた
胸にナイフが刺さっている
死体の周りには新聞が散乱していた
テレビでは「笑っていいとも」をやっていた
窓にも鍵が掛かっている
「密室殺人か・・・」
トラのジョーが呟いた
「みっしつさつじん?いつの間にポコプリが推理小説になったの?」
「最近、作者が東野圭吾に凝っているらしくてね、推理物を書きたくなったらしい」
「なるほどね、行き当たりばったりのポコプリらしい展開ね・・・」
トラのジョーは家の周りを調べた
地面にキャタピラの跡が無数についている
周囲を見回すと、林の向こうにクレーン車が見える
「あのクレーン車は何ですか?」
「カバさんはクレーン車の運転手をしていたのですよ」
「あなたは?」
「私はカバさんと同じ建設会社に勤めています、昨日カバさんが無断欠勤したもので、心配になって今日見にきたと、言うわけです」
ライオンのおじさんが答えた
「私は街で小さなスナックをやっています、カバさんのツケが溜まっていたので、今日、集金に来たのです、そしたらこんなことになっていて・・・」
悲しそうな顔でハリネズミのおばさんが言いました
「私は隣の家に住んでいるんですじゃ、隣と言っても、ほらあそこですじゃ」
山羊のお爺さんが指差した先に小さな小屋があった
ここから30メートルくらい離れている
「昨日の夜、なんかうるさい音がしとったもので、文句言おうと思って訪ねてきたのじゃよ」
ここに刑事が居るなら、各自のアリバイを確認するのが推理物らしい展開だが
あいにく刑事は居ないので省略
トラのジョーはクレーン車まで走って行った
「犯人は一体誰なのかしら?」
ポコポコ王女が話をうまく進めるために、呟くと
それに答えるように
クレーン車の運転席を調べていたトラのジョーが叫んだ
「犯人が分かった!」
トラのジョーはクレーン車の運転席に乗り込み
エンジンをかけた
大きな排気音を出して、近づいてくる
家の傍で止まると、クレーン部分を動かして屋根の上に都合よく付いている金具に引っかけて、家を持ちあげた
カバさんの小さな家は簡単に浮きあがった
「家を持ちあげてからカバさんを殺し、また家を元の位置に戻したのでしょう、こうすれば簡単に密室になる」
「え?家を持ちあげているあいだ、カバさんは何をしていたの?」
当然の疑問をポコポコ王女は口にした
「カバさんの横に散乱している新聞のテレビ欄を見てごらん、7時からの野球のところを赤鉛筆で丸く囲ってある、昨日からプロ野球が始まったんだ、それに夢中でカバさんは気付かなかったのだろう」
「そう言われてみると、ちょうど九回裏ノーアウト満塁のあたりで、何か大きな音が聞こえてきたような気がする!」
山羊のお爺さんが言いました
「きっとその時間に犯行が行われたのでしょう、犯人はカバさんをナイフで刺してから家を元に戻し、クレーン車を離れた場所に置いて、逃走したのだと思います」
「さっき、犯人が分かった!って言ったわよね?」
「もちろん分かりました」
トラのジョーは三人のほうに顔を向けると
「犯人はハリネズミのおばさんだ!」
トラのジョーは嬉しそうだ
全員がハリネズミのおばさんに注目した
「どうして私なんですか?証拠はありますか?」
「証拠は・・・・」
トラのジョーは勿体つけて言った
「クレーン車の運転席だ!」
全員がクレーン車の運転席に駆けよった
運転席の背もたれ部分に針で刺したような無数の穴が開いている
ハリネズミのおばさんは興奮のあまり背中の針を逆立てた
「ああああ・・・さすが名探偵トラのジョー・・・カバさんはツケをたくさん溜めたくせに払うの嫌だとか言いやがったから・・・頭に来て差してしまったんです・・・興奮したままクレーン車を運転した時に背中の針が刺さってしまったなんて・・・気付かなかった・・・」
ハリネズミのおばさんは無き崩れた
そこに都合よく警察がやってきて
ハリネズミのおばさんは連行されていった
ライオンのおじさんと山羊のお爺さんも帰っていく
「一件落着って感じかな」
トラのジョーはポコポコ王女に向かってウィンクをした
「でもさ・・・なんで家を持ちあげるなんてめんどくさいことしたの?」
「そりゃ、密室にしたかったからだよ」
「密室にする意味って何?それになんで屋根に都合よく金具が付いているの?なんで家が持ち上がるの?水道の配管とかどうなってるの?」
「あ〜〜〜うるさいうるさい!」
トラのジョーは走って逃げた
つづく