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 翌週から健司はギターの練習をするということで、武蔵関にある中年男の家に出かけた。

三鷹から自転車で行けば10分くらいでその家に着く。

台所と六畳二間の小さな貸家。

健司がギターを習っている間、詠子は奥の部屋で本を読んでいた。

 

「よし、じゃあ弾いてごらん」

レコードを何回か聞いてコードの流れを練習した後に中年男が言った。

「今ですか?」

「そうだ」

隣室に詠子が聞いていると思うと、健司はちょっと恥ずかしかった。

「さあ早く」

アルペジオ奏法に慣れない健司は指が吊りそうになりながらもゆっくりと弾き出した。

 

イムジン河

作詞:朴 世水

作曲:高 宗漢

日本語詩:松山 猛

補作曲:加藤和彦

 

イムジン河 水清く

とうとうと流る

水鳥自由に むらがり飛びかうよ

我が祖国 南の地

おもいははるか

イムジン河 水清く

とうとうと流る

 

北の大地から

南の空へ

飛びゆく鳥よ 自由の使者よ

だれが祖国を

二つにわけてしまったの

誰が祖国をわけてしまったの

 

イムジン河 空遠く

虹よかかっておくれ

河よ おもいを伝えておくれ

ふるさとをいつまでも

忘れはしない

イムジン河 水清く

とうとうと流る

 

「よし!よく出来た、だいぶ上達したじゃないか」

 

健司はちょっと嬉しかった。この間まではアルペジオ奏法なんて全然出来なかったのに、中年男の指導のおかげで何とか出来る様になった。

隣室の襖の間から、詠子が覗いていた。

ニコッと微笑んでくれた。

健司の顔が真っ赤になった。

 

怪しげな中年男にギターを習っているのも、詠子に会えるからだ。

しかし、いまだに二人の関係がよく分からない。

中年男の名刺には(北山和彦)と書いてあったが、フォーク・クルセダーズの北山修と加藤和彦の名前を足したような名前は怪しげだった。

美少女の名前は田中詠子だから、親子では無さそうだ。

じゃあ、恋人?

しかし年齢差がありすぎる。

詠子は15歳だと言っていたし、中年男北山和彦はどう見ても60歳近い・・・。

 

「コーヒーでも飲むか?」

 

北山が台所に行った。

隣室との間の襖の隙間から詠子が見える。

分厚い本を読んでいる。

健司は思い切って声をかけてみた。

 

「何読んでるの?」

詠子は本から目線を離さずに答えた。

「ハリー・ポッター」

「え??はりぽた?」

詠子は笑いながら「ハリー・ポッターよ、ハリー・ポッターと賢者の石」

あまり本を読まない健司には、聞いたこともない題名だった。

北山がインスタントコーヒーを入れてきた。

北山は何も入れずにブラックのまま飲んでいるが、健司は砂糖とミルクを入れないと、苦くて飲めない。

詠子も本を抱えたまま隣室からやってきて、健司の隣に座った。

インスタントコーヒーを何口か飲んだ後。

「あれ!煙草が切れた・・・仕方ないな、ちょっと買いに行ってくる」

北山はそう言うと詠子の返事も待たず、立ちあがって出て行った。

健司は緊張した。

家の中には詠子と健司だけ。

それも、ぬくもりが感じられそうなほど近くに居る。

詠子は何にも気にしていない風だが、健司は恥ずかしくて顔を見ることも出来ない。

何か話しかけたほうがいいのかもしれないが、何を話していいのか分からない・・・。

突然詠子が立ちあがって、部屋を出て行った。

怒ったのかなと思ったが、トイレのドアが開く音がした。

 

・・・なんだ、トイレか・・・

 

大きく息をした。

あのままだったら、窒息していたかもしれない・・・。

 

詠子の座っていたところに(ハリー・ポッターと賢者の石)という本が置いてある。

健司はそうっと手に取り開いてみた。

 

・・・子供向けの本か・・・

 

何かほっとした。

すごく難しい本を読んでいたら、詠子に対して軽々しく話しかけられない気がしたが、子供向けの本を読んでいるなんて、ちょっと親近感が湧いてきた。

何気なく奥付を見た。

 

1999年12月1日

 

・・・1999年?・・・

 

今は1969年だ・・・今から30年後の本?・・・

詠子に抱いた親近感が消えた。
やっぱり謎の二人だ・・・


 

つづく

 


時は1969年7月
新宿西口淀橋浄水場跡地で京王プラザホテルの工事をやっている頃・・
16歳の高校一年生山田健司は至って普通の高校生活を送っていた。
巷ではフォークソングが流行っていたので、彼もまたその波に呑まれ、中古のガットギターを友人から安価で買い、練習していた。
だからといって、フォークシンガーになろうなどと、大胆な夢は今のところ持っていない。

もちろん彼女はいない。
奥手の彼のあこがれの女性は、ピンキーとキラーズのピンキーだった。
前年「恋の季節」で衝撃的にデビューしたボサノバグループである。
「恋の季節」はオリコンチャート17週1位になっている。
彼の部屋にはピンキーとキラーズの大きなポスターが貼ってあり、それを見るたびに彼の胸はキュンとなった。
童貞の高校一年生に取ってはそれくらいの刺激で充分だった。

彼の将来の夢は漫画家になることだった。

「巨人の星」「あしたのジョー」「天才バカボン」「ゲゲゲの鬼太郎」「ハレンチ学園」「男一匹ガキ大将」「秘密探偵JA」「火の鳥」「漫画家残酷物語」「フーテン」「ジュン」
1967年に創刊されたCOMの影響も大きかった。
「いきぬき」で月例新人賞を取った青柳裕介。鮮烈な印象でデビューした岡田史子。

何とか頑張ってCOMで新人賞を取ってデビュー・・・。
でも、それでさえ、雲の上のことのようで、彼には手が届かない儚い夢に思えた。

そんな彼の前にある日突然、一人の中年男と、ピンキーより可愛い美少女が現れた。

中年男は「URCの山だと言います、初めまして」と名刺を差し出した。
オドオドしながら名刺を受取る彼には、何が起きているのか理解できなかった。

「URCと言うのは、アングラ・レコード・クラブの略称でございます。今回、自主制作でいろんなフォークシンガーのレコードを通信販売で配布することになりました。いま予定しておりますのが、岡林信康先生と五つの赤い風船先生のアルバムでございます。第二回、第三回と配布していく予定でありますが、第二回以降、ぜひ山田健司先生のアルバムも配布させていただければと思って、本日参上したわけでございます」と縦板に水の調子で一人で話す中年男。
彼に向って満面の笑みを見せている中年男。
なぜか他人のような気がしない・・・親戚?
今まで会ったこともないはずなのに、鏡に映った自分を見るような変な気分。

中年男が言ったことの半分も理解できなかった。

・・・何の話し?・・・

中年男の横には冷めた目で自分を見ている美少女。
彼女は、同じ時代に生きている雰囲気をまるっきり感じなかった。
まるで、遠い空の彼方からやってきたような不思議な美少女・・・


つづく




 

 ぺたぺたの会第一回公演

「ガウ子と宇宙人」

7月14日(土)15時、19時
7月15日(日)14時

西武新宿線・鷺ノ宮 (スペース じゃがいも村)

料金 2500円(全席指定)

 タヌキ御殿殺人事件

ポコポコ刑事がのんびりテレビを見ている時に事件が起きた
「ポコポコ刑事!殺人事件です!」
「え〜〜〜めんどくさいなあ〜、笑っていいともくらい、ゆっくり見させてよ〜〜!」

ブツブツ言いながらもポコポコ刑事は事件現場にやってきた
被害者はタヌキのお爺さん、豪邸に一人で住んでいたらしい
二階の寝室で、胸に包丁が刺さったまま、ベッドの上で大の字になって死んでいた

「この爺さん一人暮らし?」
「そうですね、お婆さんは10年前に亡くなり、子供たちは独立して、今はタヌキ爺さんの一人暮らしです」
部下であるトラのジョーが手帳を見ながら言った
「家政婦は?」
「第一発見者が通いの家政婦です、寝室に呼びかけても返事が無く、鍵が掛かっていたので、合鍵で開けたら死んでいたと言うことです」
「なんだ〜簡単じゃないの〜その家政婦を連れてきなさい!」

犬の家政婦がオドオドとやってきた

ポコポコ刑事はすかさず殴りつけた
「キャン!」
犬の家政婦は階段を転がり落ちた
「犯人はお前だ!」
「ポコポコ刑事、殴ることはないでしょう!」
「だって、こいつが犯人だもん!犯人なら殴ったっていいじゃん!」
呆れるトラのジョー
「まだ犯人だって決まってませんよ、どういう理由で家政婦さんが犯人なんですか?」

「だって、鍵が掛かっていたってことは密室だってことじゃん、そして家政婦は鍵を持っている!第一発見者を疑えっていうのはセロリよ」
「それを言うならセオリーです」

階段転げ落ちた犬の家政婦が殴られた頬を押さえながら階段を上ってきた
「私は犯人じゃありませんワン」

ポコポコ刑事はムカついて蹴飛ばした
「キャン!」
犬の家政婦が階段を転げ落ちた
「あたしに口答えするんじゃないの!あんたなんか三味線にしてやる!」
「ポコポコ刑事、それは猫です」

そこにキャバ嬢みたいな猫がやってきた
「タヌキさんが亡くなったって本当ですか?」
「・・・三味線が来た」

「あなたは?」
トラのジョーが冷静に聞いた
「あたしはキャバレーにゃんにゃんのチーママです、タヌキさんは毎日通ってくれていたんですよ、あんな良い人が殺されるなんて〜〜可哀そう〜〜」

「そうですか、タヌキさんが最後にお宅に行ったのはいつですか?」
「昨日の夜です、店の女の子にチップをくれて楽しそうに飲んで帰って行きました」
「何時までお店にいたのですか?」
「え〜と、10時くらいでしょうか・・・」
「ふむ・・・なるほど・・・」

「ほら、トラのジョー、どうでもいいけど、早く家政婦を逮捕して帰ろうぜ、今ならミヤネ屋に間に合うからさ」
「ポコポコ刑事、まだ家政婦さんが犯人って決まったわけじゃないですよ」
「いいじゃん、めんどくさいから家政婦でさ〜」

そこにネズミの運転手がやってきた
「私はタヌキさんの専属運転手をやっているネズミの忠太郎です」

ポコポコ刑事の目がキラリと光った!
「真犯人発見!」

犬の家政婦と猫のチーママとネズミの運転手忠太郎がポコポコ刑事を見た
ポコポコ刑事の後ろで、トラのジョーが難しい顔して寝室の中を見回していた

「犯人はネズミの運転手だ!」

運転手の忠太郎はびっくり
「どどどどどどうして私が犯人なんですか?」

ポコポコ刑事は余裕の表情でベッドの横を指差した
「そこに小さな穴が開いている、あんな小さな穴から出入りできるのは・・ネズミしかいない!だからお前が犯人だ!」
ネズミの運転手、腰を抜かして
「そそそそそんな理由で?」

「だって、密室殺人事件なんて、そんなもんじゃないの?」

「だだだだだだだって・・・動機が無いですよ、私はタヌキさんを尊敬していましたし、殺す理由なんて無いですよ〜〜そんな穴なんて知りません、私が開けたんじゃありません〜〜〜」
そう言いながら泣いた

ポコポコ刑事は余裕の表情で
「分かった、動機無き殺人事件だ!」

「そんなバカな?!」

「馬鹿だって!よ〜し!みんな逮捕してやる!みんな死刑だ!」

「待ってください!犯人が分かりました」
トラのジョーが自信に満ちた声で告げた

ネズミの家政婦
猫のチーママ
ネズミの運転手
3人のうち誰が犯人なのか?

「誰よ?早く言いなさいよ」
ポコポコ刑事はミヤネ屋に間に合いそうになかったのでイライラしてた

トラのジョーは窓際の鍋を指差した
「その鍋が謎を解くカギです」

「なんで鍋?あんたホントに犯人分かったの?いい加減なこと言わないでよ」

トラのジョーは鍋の中に手を入れて何かをつまみあげた
そしてみんなの前に来て見せた
「これは毛です」
3人は緊張した
「猫の毛です」

猫のチーママが思わず後ずさりした

「猫は鍋を見ると入りたくなるものです、あなたは昨日、タヌキ爺さんを殺した後、すぐに逃走しようとしたが、思わず鍋に入ってしまった・・・間違いないですね?」

ジッと耐えていた猫のチーママが泣き伏した
「ごめんなさい〜〜〜私が殺しました〜〜〜借金を申し込んだのにタヌキ爺さんに断られたものだから思わず・・・ごめんなさい〜〜〜鍋さえ無けりゃ完全犯罪だったのに〜〜〜」
猫のチーママは泣きながら連れていかれた

「一件落着ですね、ポコポコ刑事」

「なんかよく分かんない結末だけど・・・密室のほうはどうなったの?」
「猫のチーママは内側からカギをかけて、窓から飛び降りたのでしょう、ほら、猫は二階から飛び降りても平気ですから」
「あら、窓は開いていたの?知らなかった、それってずるくない?」

「さて、帰りましょうか?」

「ちょっと!トラのジョー!ずるいわよ!」
ムカついたポコポコ刑事は犬の家政婦を蹴飛ばした
「キャン!」
犬の家政婦は階段から転げ落ちた


おしまい









7月14日と15日ですガウガウ
西武新宿線 鷺ノ宮「じゃがいも村」

ガウガウ〜〜〜〜!


 忙しかった後
体調を崩していました
何も更新できなくてごめんなさい・・・
やっと体調が回復してきましたので
来週から頑張ります!

 ぺたぺたの会
第一回朗読会

演目
「ガウ子と宇宙人」
その他

声優多数出演!?

7月14日(土)15日(日)
3回公演




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