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ある朝目覚めると道の真ん中らしきところで横になっていた。
周りでたくさんの人々が私を見下ろしている。
行き倒れだと思われたみたいだ。
私は誤解を晴らすためにすぐに立ち上がり。
「大丈夫です、私は何ともありません、ご心配かけました」
そう言って頭を下げたが、周りの人々からは何のリアクションも無い。
反対に(邪魔な奴がいなくなった)風な多少の安堵感さえ伝わってくる。
私が占めていた空間に人々が押し寄せ、あっと言う間に人ごみに飲み込まれてしまった。
ただ、人々はどこに向かおうとしているのでもなく、ただそこに佇んでいるだけだ。
私は家に戻ろうと思い、群衆から抜け出そうとしたが、佇んでいる人々は動こうとしてはくれない。
しかしここは満員電車の中ではない。見上げると青い空に白い雲。普通の路上のようだ。
「すいません、ちょっとここから出してください」
周りの人々が怪訝な表情で私を見る。
「家に帰りたいだけです、すいませんここから出たいんです」
後ろから腕を掴まれ怒鳴られた。
「ここからは出られない、じっとしていろ!」
「出られないってどういうことですか?一体ここはどこなんですか?」
「ここは武蔵関の駅前だ」
駅前ってことは私の家は歩いて10分だ。
「ここから出してください。一体これは何の行列なんですか?有名な関のボロ市ですか?私を家に帰してください」
最後の方は悲鳴のようになってしまった。
非難の声が私に向かって一斉に浴びせられた。
「うるさい」
「黙っていろ!」
「叫んだってどうにもなりゃしない!」
どうにもならないって・・・
すると突然前に立っていたサラリーマン風の男が立ち小便を始めた。
「なななな何だ?」
私のズボンに小便が跳ね返る。
強いアンモニア臭が漂ってくる。
しかし、周りの人々は何も文句も言わず見て見ぬ振りで佇んでいる。
「仕方ないんですよ、この群衆から抜け出ることは出来ないのですから、トイレに行くことも出来ないんです」
声の方に顔を向けると、度の強いメガネをかけた初老の男が悲しそうな顔で空を見ていた。
「食べるものは時々まわってきますから、それで空腹を癒してじっと立っていれば良いんです」
「どうしてここから出られないんですか??どうして家に帰っちゃいけないのですか?」
初老の男は私を見つめて「あなたの家も満員だからです。どこに行ってもこんな状態なんですから」
私の家も満員?
どこへ行っても満員?
「どういうことなんですか?」
「ここは四次元の世界です。あなたはきっと三次元の世界からここに迷いこんできたのでしょう」
「四次元?」
「三次元の世界はご存知ですよね。幅と奥行きと高さのある世界」
「ええ、もちろん知ってます。ここが四次元ってことは、時間軸が加わった世界ってことですか?」
「いえ、違うんです。この四次元は三次元の要素に不老不死が加わった四次元なんです」
「不老不死?」
「そうなんです、ですからここの住人は死ぬことはありません。生まれたら生き続けるしか無いのです。誰も死なないのですから、ご覧のように人口が増えすぎて地球上は人間だらけです。どこもかしこも満員電車状態です。昭和の山手線状態です」
「三次元に不老不死が加わって四次元?そんな四次元が存在するのか??」
初老の男は「ここにあります」と言って悲しそうに笑った。

おしまい



 

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